とあるお店で買い物をしたら、「新しい店舗ができました」とチラシをくれました。そこには、このお知らせを持って買い物をしてくれたお客さまには記念品を差し上げます、という主旨で下記の文言が書かれていました。
「ご持参しお買い上げのお客様には」
これは気になりますね。
「お買い上げ」は「買い上げる」という動詞を名詞化(「~ます」になる形にして名詞化したもの)したうえで「お」を付けているので、動作の主体であるお客さまを立てている言い方です。
ちなみに「買い“上げる”」とは、下(店側)から上(お客さま)への動きを表しています。
しかし、「ご持参し」は「持参する」という動詞に「ご」が付いているので、動作の<向かう先>を立てる言い方です。
※接頭辞「お」「ご」とは何か のページもあわせてご参照ください
※「持参」という言葉には「参る」という謙譲語が入っているので、そもそも立てたい相手に使うべきではない、という議論もあります
どこへ持参するかというと、これは「当店」に持っていくわけですから、「当店」を立てていることになります。
では、この文章を「お」「ご」を使わずに書き直すとどうなるか、やってみましょう。
「俺様の店にテメエが持ってまいるのだ。かつ、私どもの店で商品を買い上げてくださった大切なお客さまには」(デフォルメしてます!)
このようなチグハグな文章になります。
もしかすると、「ご持参のうえ(上)、お買い上げ」と書くと「上」が2回続いて見苦しい文章になってしまうことを気にして、わざわざ変えたのかもしれませんね。
それであれば、下記のような言い方はいかがでしょう。
「会計時に本状をご提示ください。」
敬語をたくさん入れ込むよりも、敬語を使わないようにしたほうが、スッキリとすることもあります。
では、また気になる敬語がありましたらお伝えしてまいります。