3時間目:接頭辞「お」「ご」の付かない敬語

「お」「ご」の付かない敬語

「お」「ご」が付かない敬語もあります。

以下に該当する言葉は「お(ご)+動詞の連用形名詞」「お(ご)+動詞の連用形+する」のようにこれまでに説明した変化のルールが使えません。

そのような言葉は、特別に変化します。

 

それを特定形といいます。

 

 

a)「お」「ご」を付けられない言葉

「いる」「行く」など一部の動詞には、「お」「ご」が付けられません。

無理やり作ると「社長が“おい”です」「わたしが”お行きし”ます」と、とてもおかしな日本語になってしまいます。

そこで、そのような動詞は「社長がいらっしゃいます」「わたしが伺います」と全く異なる形に変化します。

 

 

b)動作の主体(主に自分側)を低める言葉

「お」「ご」は誰かを立てたり、何かを高めたりする接頭辞なので、低めたいときには付けられません。

 

 

 動作の<向かう先>を立てるのではなく、動作の主体(主に自分側)を低める必要があるのはどのようなときでしょうか。

 

それは、話の登場人物間での上下関係ではなく、誰に向かって話しているのか(書いているのか)、その相手を立てたいときです。

例えば、一商人である”越後屋”が”お殿さま”に向かって話をするときには、お殿さまより偉い水戸の黄門様との出来事であれ、屋敷に入ったこそ泥の話であれ、話の内容に関わらず”お殿さま”より低くなるように頭を垂れて話すことでしょう。

 

 

このように、話している相手に対して、ひざまずいたり、ひれ伏したりという態度を表すための言葉です。

 

ですから、「です。」「ます。」などの丁寧語とセットで使われます。

 

 

 

 具体例を挙げれば、取引先に渡す必要書類を持ってきたことを取引先に向かって言う場合には、<向かう先>である取引先を立てて「(書類を)お持ちしました」と言いますが、自分の上司に向かって報告する場合には「(書類を)持ってまいりました」「持ってきております」と言うでしょう。

このときの「まいる」は「来る」の特定形、「おる」は「いる」の特定形です。

 

それを『敬語の指針(平成19年2月2日)』では、「自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの」と定義しています。

 

 

特定形の主なものを一覧にしました。

「尊敬語」とは動作の主体を立てる言葉、「謙譲語Ⅰ」とは動作の<向かう先>を立てる言葉、そして「謙譲語Ⅱ」が動作の主体(主に自分側)を低める言葉と理解してください。

a)により特定形になるものは「尊敬語」と「謙譲語Ⅰ」、b)により特定形になるものは「謙譲語Ⅱ」です。

主な特定形の一覧

基本動詞 尊敬語 謙譲語Ⅰ 謙譲語Ⅱ
会う    お目にかかる  
与える   差し上げる  
言う おっしゃる 申し上げる 申す
行く

いらっしゃる

おいでになる

伺う 参る
いる

いらっしゃる

おいでになる

  おる
思う 思し召す   存じる
聞く   伺う  
来る

いらっしゃる

おいでになる

お見えになる

お越しになる

伺う 参る
くれる

くださる

   
知る ご存じ 存じ上げる 存じる
する なさる   いたす
訪ねる  

伺う

 
尋ねる  

伺う

 
食べる(飲む) 召し上がる   いただく
見せる  

お目にかける

ご覧に入れる

 
見る ご覧になる

拝見する

 

もらう

 

いただく