敬末の原則とは、敬語は後ろに使いましょう、という原則です。
2つの文章を見比べてください。
a)その角を右に曲がりましたら、着く。
b)その角を右に曲がれば、着きます。
aもbも、使っている敬語は丁寧語1つだけです。
しかし、bは丁寧な印象であるのに比べ、aはぞんざいというか、話している途中で気に障ることでもあったんじゃないだろうかと疑問に思うぐらい不自然に感じませんか。
誰がどうする、何がどうした、などの、「どうする」「どうした」にあたる部分を述語と呼びます。英語では主語が重要と言われますが、日本語ではこの述語が重要です。例文でいえば、「着く」「着きます」の部分です。
最後の述語部分に使った敬語は、その文全体にかかります。
bの例文では、文中に「曲がれば」と敬語を使わない言葉がありますが、文末に「着きます」と丁寧語を使っているので、「曲がれば」も丁寧語で話しているのと同じ意味を持つのです。
逆にいうと、「着きます」と文末で丁寧語を使っているにも関わらず、「曲がる」という文中の動詞を丁寧語にしてしまうと、二重に丁寧語をあてていることになります。
もし、文中で丁寧語を使うのであれば、文末はもう一段敬度の高い「ございます」などを使うとバランスが取れます。バスガイドが「右手に見えてまいりましたのが、東京タワーでございます。」という要領です。
例文の「着く」にそのまま、「ございます」を付けると「着くでございます」と何やらおかしな言葉になってしまうので、「その角を右に曲がりましたら、目の前でございますよ。」という言い方なら、問題ないでしょう。
さて、ここで今回の #気になる敬語 です。
「殺菌作用のあります商品です」
※インスタグラムに挙げた文章を少し省略して記載しています。
文末が「商品です」であれば、前半は「殺菌作用のある」でよいのです。
例えば、「採れたての果実で作った美味しいジャムです」と書かれたPOPがあったとしましょう。これに対して「作った」に丁寧語が使われていないから失礼な文章だ、と感じる人は恐らくいないでしょう。なんの問題もない日本語です。
もっと丁寧にしなければと、「採れたての果実で作りました美味しいジャムです」とやるからおかしくなってしまう。
もちろん、もっと丁寧にしたければ、「採れたての果実で作りました、美味しいジャムでございます」とも言えます。しかし、そこまで書くと、わざとらしくなってしまうと感じるならば、自信をもって「採れたての果実で作った美味しいジャムです」と言いましょう。
もっと敬語を使わなければと”敬語強迫神経症”(もちろん私の造語です(*^^*)になったときには、この「敬末の原則」という言葉を思い出してみてください。
「そんなに敬語を散りばめなくてもいいんだ」と少しほっとできるかもしれません。
敬語は、後ろに使いましょう。
では、また。