私が「お(ご)~なさる」を勧めない三つの理由ーーーその弐

「お(ご)~なさる」という形を私が勧めない理由の1つ目として、「現在の人間関係の在り方に合っていない」点を説明いたしました。

 

今回は、2つ目、「二重敬語や誤った敬語を増長しやすい」です。

 

「お(ご)~なさる」はもちろん尊敬語ですが、「なさる」の部分を敬意のない基本の動詞に戻すと「する」となり、「お(ご)~する」が元になっていると解釈することもできます

 

お(ご)〜する」は動作の対象を立てる表現で、『敬語の指針』では謙譲語Ⅰに分類されます。 

 

『敬語の指針』では「お(ご)〜する」の「する」部分を受け身形の尊敬語にして「お(ご)〜される」と表現するのは「尊敬語の適切な形ではない」とされています。であるならば、同じく「お(ご)〜する」の「する」部分を特定形の尊敬語である「なさる」に変えて良いのは混乱を生じます。

 

既に巷では、尊敬語として「お(ご)〜される」が使われるという誤用が目立っています。「お(ご)~なさる」ではちょっと古めかしいので、という理由から受身形の尊敬語「される」に入れ替えて使われるようになってしまったのではないでしょうか。(このブログでも、2018/05/20に「ご購入された」という誤用を取り上げています)このままでは、尊敬語と謙譲語の区別すら曖昧になってしまいかねません。

 

必要最低限の敬語でよいので、正しい敬語を身につけられるようにしないと、日本の敬語は廃れてしまうのではないか、そんな危惧を抱いています。

 

ひらがなとカタカナと漢字を使い分けることや、オノマトペの豊富さなど、日本語の素晴らしい要素はいくつもありますが、敬語も見落とすことのできない特長です。

 

ぜひ敬語を使いこなし、適切な敬意を表現することで、相手の立場に立ってものを考える日本語を大切に次世代に伝えていってほしいと思います。