今回、見つけてしまったのは、とある会場の入口に置いてあった看板の注意書きです。
この看板から想像される人間関係は、「入場する側(利用者)」と「入場される側(主催者)」の2者だけです。
「ご入場する」は謙譲語なので、入場する利用者の代表が主催者を立てて言う言い方です。
したがってここだけを読むと、「私たち利用者は(主催者に敬意を払い)入場しないようにしましょう」という解釈になってしまうのですが、そのすぐ上には「お持ちでない方」とあります。
「お持ち」は尊敬語ですし、「方」も立てるべき人を指すときの言い方です。今度は、ここだけを解釈すると、看板を立てた人は利用者代表としてではなく、利用者を高めているように読めます。
すると、「お持ちでない方は」と利用者を高めておきながら、間髪入れずに「ご入場することができません」と主催者側を高めており、一体このメッセージを書いた人はどちらに立ち位置があるのだろう、と他人事ながら、気になってしまいます。
さて、「入場する」の尊敬語は「ご入場になる」ですので、それを可能表現にするなら「ご入場になれる」(この場合であれば「ご入場になれません」)が正しい表現です。
どうも、この「~になれる」「~になれません」が出てこないようですね。
「~をお持ちでない方はご入場になれません」
尊敬語の可能表現も覚えておくと、いざというときに役に立つかもしれません。
それでは、また。