「ご一緒に」お使いいただけます#気になる敬語

ポストに投函されていたチラシに、クーポンが付いていました。

そして注意書きとして他のクーポンと「ご一緒にお使いいただけます」と記載されていました。

 

惜しいですね。この場合に「ご」は不要です。

「ご一緒」は「ご一緒にいかがですか」などと使われるので、ここでも使ってしまったのでしょう。

 

そもそも、「一緒」は名詞なので、その名詞が所属する対象を立てます。

(2時間目:接頭辞「お」「ご」 も参照してください)

 

そして、「一緒に」は「お使いいただけます」に係っているので、「お使いいただく」主体が、「一緒」が所属する対象です。

 

従って、問題は「お使いいただく」の主体は誰か、ということになります。

 

別の例で考えてみましょう。

小さな女の子が、棚の上にあるお菓子を取りたいのですが、手が届きません。そこで、背の高いお兄ちゃんに取ってもらいました。

お母さんが女の子に聞きます。

 「あら、自分で取れたの?」

女の子が答えます。

 「ううん。お兄ちゃんが取ってくれたの。」…a)

お母さんが言います。

 「じゃあ、お兄ちゃんのお菓子ね。」

女の子が主張します。

 「違うわ。わたしが取ってもらったの。」…b)

 

a)では、お菓子を「取った」のも「くれた」の「お兄ちゃん」で同じ人物です。

当然、「取ってくれた」のは「お兄ちゃん」です。

b)では、お菓子を「取った」のは「お兄ちゃん」ですが、「もらった」のは「わたし」です。そして「取ってもらった」のは、「わたし」です。

 

「取る」の尊敬語は「お取り」、「くれる」の尊敬語は「くださる」、「もらう」の謙譲語は「いただく」ですから、a)b)の太字部分を敬語にすると、「お兄さまがお取りくださった」「わたしがお取りいただいた」となります。

 

話を戻しましょう。

 「(クーポンを)お使いいただく」のは誰でしょう…?

 

そう、店ですね。

ということは、「お使いいただく」に係っている「ご一緒に」は店を立てていることになり、不自然です。

 

「お兄ちゃんは親切に取ってくれた」とは言えても「わたしは親切に取ってもらった」とは言えないのと同じです。(もし言うなら、「本当は自分で取れるけど、自分は親切だからあえて相手に取ってもらった」というような意味になります)

 

「ご一緒」が正しい敬語というわけではなく、「ご」を付けるか付けないかは、それが誰を立てるのか、というところがポイントになります。

 

それでは、また。