いろいろと気になる言葉を見つけてしまいました。
それが「ご利用者」です。
「利用者」は名詞ですが、名詞に「お」や「ご」を付けるとその名詞が所属する対象を立てる働きをします。
詳しくは接頭辞「お」「ご」をご参照ください。
しかし、「利用者」が所属する対象って何でしょう。
そう考えると、おかしいですよね。
例えば「お客はこちらでお待ちください」という看板があったらどうでしょう。
誰もがおかしいと気づきますよね。
正しくは、もちろん「お客さま」です。
名詞が所属する対象を立てるのではなく、名詞が表す対象そのものを高める言い方が「お~さま」「ご~さま」です。
時代劇であれば別ですが、「おっとう」「おっかあ」など「お(ご)」単独では基本使えず、「さま(さん)」とセットで使って、「お父さま」「お母さま」となります。
それを今回のケースに当てはめると「ご利用者さま」となります。
それでは「ご利用者さま」が正解かというと、そうでもないところが、今回のいろいろと気になるところです。
名詞が表す対象そのものを高めたければ、なんでも「お(ご)」と「さま(さん)」で挟むことができるかというと、そう簡単な話でもないのです。というよりも、「お客さま」などのよく耳にする言葉以外は、おいそれと使わないほうが無難です。
例えば上司のことを「お上司さま」とも言えませんし、「お課長さま」とも言えません。「お株主さま」「ご預金者さま」「ご選手さま」「ご監督さま」、全て駄目です。「お天道様」とは言えますが(今ではあまり聞きませんが)、「お神様」とも言えません。
「ご利用者さま」と書いてあるのを見たり聞いたりしても、別に気にならないという人も多いでしょうが、気になるという人も確実にいるのが「ご利用者さま」という言葉です。もしかするとこの看板を書いた人(正確には、書かせた人?)は、「ご利用者さま」が気になる人だったのかもしれません。ただ、残念なことに「ご利用者」では、冒頭で述べたように間違いです。「お客さま」は使いたくなかったんでしょうか。
一番わかりやすい表現であれば「お客さま」ですが、何か考えがあって「お客さま」とは書きたくなかったということであれば、「ご利用の方」「ご利用になる方」が正しい言い方です。
また看板を出すときには、参考にしてくださいね。なんて…。
それでは、また。