「駐輪いただく」#気になる敬語

「購入いただく」と「ご購入いただく」。

正しい敬語はどちらでしょう。

 

そう、

「ご購入いただく」ですね。

これは、恩恵を受ける表現である「お(ご)+名詞化動詞+いただく」の言い方です。

2時間目:接頭辞「お」「ご」参照

 

それでは、「駐輪いただく」は正しい言い方でしょうか。

違いますね。

では正しく言うとどうなるでしょうか。

「ご駐輪いただく」?

 

いえいえ、違います。

「駐輪なさる」もしくは「(自転車を)お停めになる」です。※「ご駐輪になる」も駄目です。

 

「購入する」は「ご購入いただく」という言い方ができるのに、なぜ「駐輪する」は「ご駐輪いただく」と言えないのでしょうか。

 

それは、駐輪されることが、この店にとって迷惑だからです。

 

この貼り紙は、食品などを取り扱うお店の前にありました。駐輪場もない小さな店で、道端に自転車を停める客が多く困っているのでしょう。

 

「お(ご)+名詞化動詞+いただく」の言い方は、上にも書いたとおり、”恩恵を受ける”表現です。そもそも「いただく」とは「もらう」の謙譲表現です。

本来であればありがたく頂戴したいところだが、という状況であれば「あなたにお支払いいただくわけにはいきません」などと言えますが、今回は最初から駐輪してほしくないので、あてはまりません。

 

さて、それではなぜ「ご駐輪になる」が駄目なのか、についても補足しておきましょう。

 

「駐輪する」は「運転する」同様、「ご」が付けられないからです。

 

「お」や「ご」が付けられるかどうかについては、残念ながら分かりやすい法則などはありません。

「お大根」とは言うが、人参には「お」も「ご」も付けられない。「ご納得」のように、漢語には「ご」が付くのが原則ではあるが、「お返事」「お加減」など「ご」の付けられない漢語も多い。

このように「お」や「ご」の付け方については慣習によるところが大きいので、付けてみて変なら、付けない言い方を選んでください。

 

それでは、また。