「ご精算された」#気になる敬語

今回気になった敬語は「ご精算された」です。

 

5月20日のブログでは「ご購入された」を取り上げました。

「ご~された」という型は同じなので、「~された」という尊敬語と「ご~する」という謙譲語が組み合わされているということも、おかしな日本語であるということも変わりません。

 

しかし、以下の2つの条件を満たせば、これは、おかしな日本語ではなく、正しい敬語の使われ方になります。

 

①”精算する人”から見て、”精算する相手”は立てるべき対象であり、この状況を”言葉にしている人”(実際に「ご精算された」と述べている人)もそれを承知している。

 

②この状況を”言葉にしている人”から見て、”精算する人”は立てるべき対象である。

 

実際には利用者に向けた看板ですので、”利用者”と”企業”の二者しかおらず、上記の2つの条件を満たすことは難しいのですが、三者いたらどうなるか、考えてみましょう。

 

まず①の条件を満たすことが難しいですね。”お客さま”に向けて立てられた看板ということから考えると、この「精算する」という言葉には「お客さまの支払い行為」まで含まれるように考えられるのですが、そう解釈してしまうと、もうその段階で精算する相手を立てることができなくなってしまいます。

 

そこで、「精算する」は「飲み会の支払いは係長がいったん全額支払ってくれたが、後日、参加した人数などを計算して調整する」というような行為を想定してみましょう。

 

”精算する人”は先輩社員、”精算される人”を係長、”言葉にしている人”を後輩社員とすれば、①②の条件を満たせそうです。

 

先輩「昨日の飲み会なんだけど、君は2千円。今日のうちに精算して差し上げたいんだけど、今、払えるかな。」

後輩「先輩がご精算されるんですね。はい、どうぞ。よろしくお願いします。」

 

「ご精算する」で先輩から係長への敬意を表し、「される」で後輩(発話者自身)から先輩への敬意を表しています。

 

 

実際にこのような会話になることはあまりなさそうですが……。

 

ではまた。