前回は「ご精算された」を取り上げましたが、今回は「ご精算し」です。
終止形(辞書形)にすれば、「ご精算する」です。
「精算する」という動詞に「ご」を付けることで”立てている”のは誰でしょう。
その動作の<向かう先>ですね。
この場合であれば「ご精算して下さい」と言っている本人です。
言っている側を立てるということは、「使わせてやっているのだから、ありがたく精算するがよい」ということになってしまいます。
もちろん、注意書きを読んで精算する人を立てるなら、正しい言い方は「ご精算ください」です。
自分を立ててしまう敬語の誤用は、このブログでも何度か取り上げていますが、なぜこのように誤用が多いのでしょうか。
実は、似たような言い方はコールセンターで働いていたときにもよく耳にしました。そのときの一人が、『「ご精算して」+ください』ではなく、『「ご精算」+してください』と言っているのだから問題ないのだという主旨のことを言っていました。
言葉は人に伝えるためにあります。まして敬語は、敬意を人に伝えるためのものです。お互いに共通するルールがあるから意味が通じるのであり、それが文化です。ルールを自分なりに解釈することと、自由な自己表現とは別のものです。
スポーツをやるときには、そのスポーツのルールを知ろうとし、それに従うものです。(お互いが勝手なルールでやっているサッカーなど、きっと見てもつまらないことでしょう。)
敬語のルールを、もっと皆さんに知ってもらうための一助に、このブログはなっているでしょうか。
では、また。