Q:メールや手紙をもらうときに、「●●様」と書いてくる人と、「●●さま」と書いてくる人がいるが、どちらが正しいのですか?
先日の敬語講座の後、受講者の方から質問を受けたのが、表題に掲げた敬称の書き方です。
それに対しての私の回答は以下のとおりです。
A:漢字とひらがなの使い方には様々な基準があるので、どちらが正解とは言えません。それぞれの会社の文化があると思うので、社内で作成されたメールや文書に倣ってください。
結論としては以上なのですが、これで終わりでは寂しいので、もう少し説明しましょう。
まず、漢字の基準になるものとして、内閣告示である「常用漢字表」があります。
ただし、これはその前書きにも書いてあるように「漢字使⽤の⽬安」であり、強制力はありません。また、常用漢字表は完璧なものではなく、例えば「学」という字に「ガッ」という読み仮名は掲載されていません。従って、AI(人工知能)にこの常用漢字表を覚えこませただけでは「学校(ガッコウ)」を正しく読み上げることはできません。
そこで、常用漢字表に従いつつ、実際にどのように表記するのかの基準となるよう、下記のような書籍が出版されています。
・日本速記協会『標準用字用例辞典』
・共同通信社『記者ハンドブック』
・日本放送協会『NHK新用字用語辞典』
上記は一部であり、実際にはもっと様々な辞典や手引きがあります。
「様」か「さま」かという問題についても、『標準用字用例辞典』では「様」、『記者ハンドブック』では「さま」を推奨しているという状況です。
「ウチの会社は『NHK新用字用語辞典』に従う!」などと方針が明確な会社であればよいのですが、新聞社やテレビ局など、報道・出版関連でない限り、そのような方針は持っていないのが普通です。
したがって、敬意を表す手段として敬称を使うという目的から考えれば、最初にこちらから送るメールの場合は社内のやり方に従い、相手からメールが届いた場合には相手の書き方に従うというのが適切ではないでしょうか。
※手紙の封筒に宛名を書く場合に「さま」を使うことはありません。
もし、今回のブログを読んでご興味が湧いた方がいらっしゃったら、「常用漢字表」もご覧になってみてはいかがでしょうか。
常用漢字表URL:http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf
それでは、また。