面白い本を見つけました。神戸大学教授の定延利之先生が書いた、『ささやく恋人、りきむレポーター』です。
これは、”文法”の範疇からは外れてしまいそうな、言い淀みやつっかえなどについて、とてもまじめに考察している本です。
例えば、あなたがお母さんから映画に誘われたとしましょう。
「ねえ、あんた、今週の日曜日空いてる?
お母さん、観たい映画があるから付き合ってよ、おごるから」
こんなとき、
「今週の日曜日ですね。予定を確認するので、少し待っていてください。」
などと答えることは、まずないはずで、大体は
「えー、今週?今週かぁ。日曜どうだったけかな~。
え、な、何?何観んの?
はいはいはい、あれね~。うん、あれか~。
じゃ、ちょっと待っててよ。確認してみるから。」
というように、”意味のない言葉のほうが多いんじゃないか”、と思われるような会話になりがちです。
でも、本当にそれって”意味ない”の?
ということを考えているのが本書です。
「えー」と「さー」のニュアンスの違い。
「はいはいはい」というときの独特の節回し。
通信速度がどれほど速くなり、即時にメールが受け取れるようになっても、LINEの必要性は薄まらないでしょう。それは、単に伝わる速さの問題だけではなく、スタンプで表情が付けられるからというのも一つの理由でしょう。
メール(特にビジネスメール)では、絵文字がつけづらく、メールを送った後に電話して事務的にならないように配慮する必要があります。
では、電話がなぜ事務的にならない配慮として使えるのかというと、お母さんに聞かれて予定を確認するときのように、無駄な言葉があったり、言い淀んだり、アクセントやイントネーションが付けられたりするからです。
それらは、無駄なように見えて実は無駄ではなく、それぞれの役割があるというのであれば、それらをはぐくんできた人類もまた素晴らしいものだと自画自賛してよいのではないかと思えるのです。
いや、こんな壮大な話が書かれているわけではないのですが……
まあ、面白いので、よかったら読んでみてください。
では、また。