先日開催した敬語講座にて表題の質問がありました。
勘違いしやすいところではありますが、これは”敬語連結”という使い方で、文法上誤った使い方ではありません。二重敬語と敬語連結は、似て非なるものなので、セットで理解してしまいましょう。
■二重敬語 ”1つ”の動詞を2回以上敬語に変換すること(間違った敬語の使い方)
「食べる」という動詞を例にとると、主体尊敬には「食べられる(受身形)」「お食べになる(付加形)」「召し上がる(特定形)」と3つの形があります。
二重敬語は、一つの動詞を2回以上敬語に変換することですので、この場合「お食べになられる(受身形+付加形)」や「召し上がられる(受身形+特定形)」を指します。※「お召し上がりになる(付加形+特定形)」も二重敬語ですが、これは使ってもよいと許容されています。
■敬語連結 動詞と補助動詞の組み合わせをそれぞれ敬語に変換すること(文法上正しい敬語の使い方)
補助動詞とは、動詞のあとにつなげて使うことで、ニュアンスを付け加えるもののことです。例えば「彼は、私が作ったご飯を食べてくれた」というときの「くれた」が補助動詞にあたります。補助動詞に対して、この場合の「食べる」を本動詞といいます。※2月26日のブログでもとりあげていますので、そちらもご参照ください
この「食べてくれた」に含まれる、「食べる」と「くれる」をそれぞれ主体尊敬にすると「召し上がる」と「くださる」なので、「食べてくれた」は「召し上がってくださった」となります。これは文法上間違ってはいません。
表題の「お待ちになっていらっしゃる」は常体(敬語を使わない文章)に戻すと「待っている」です。これに含まれる「待つ」と「いる」をそれぞれ主体尊敬にした言葉なので、文法上正しい使い方であると言えます。
■過剰敬語 敬語を必要以上に用いること
敬語連結を説明するにあたり、”文法上”と限定をつけたのは、”文法上”正しいことが”どんな場合でも使って良い”こととイコールではないからです。
敬語で表せることは人間関係の上下や場の改まり度などですが、人間関係といっても”少し目上の人”や、”すごく目上の人”がいるでしょう。場の改まり度も同様に”少し改まった場”と、”すごく改まった場”があるでしょう。例えば、先輩社員に仕事の進め方を相談するときと、自分のミスで出した巨額の損失を上司に謝罪するときでは用いる敬語も変わって然るべきです。
”大は小を兼ねる”は敬語には当てはまりません。どの程度の敬語がいま求められているのかを都度判断しながら適切な敬度の敬語を使うのが、敬意を込めた敬語の使い方です。「一番丁寧な言葉を使っておけば問題ないんじゃないか」という考え方は敬意と反しています。
敬語を用いるのは、敬意を表すためですが、正しい敬意とは自分の立場や置かれている状況を正確に把握していることから生まれます。
逆に言えば、敬語の正しい使い方を知ることで、正しい敬意の持ち方も知ることができます。敬語って面白いと思いませんか。
それでは、また。