丁寧なのはわかるけど、なんだかうっとうしいな。
人の敬語を見聞きして、そんなふうに感じたことはありませんか。
「です」や「ございます」が正しく使われていないと、うっとうしい敬語になりがちです。今回はそんな「です」「ございます」を取り上げます。
■「です」は「だ」の丁寧な言い方
「です」は断定の助動詞「だ」の丁寧な言い方です。
したがって、「だ」は「です」に置き換えられます。
「これは犬だ」「これは犬です」
「それは私だ」「それは私です」
「日本の首都は東京だ」「日本の首都は東京です」
■「です」をもっと丁寧に言うと?
「です」のもっと丁寧な言い方は何ですか、と質問すると「ございます」と答える人が多いのではないでしょうか。
では、本当にそうか、考えてみましょう。
「これは犬です」の「です」の部分を「ございます」に変えるとどうなるでしょう。
「これは犬ございます」になります。「で」が足りません。
おかしいですね。
それでは、「これは犬です」の「す」だけが「ございます」に該当するのでしょうか。
それも、おかしいですね。
■「で+ございます」という連語
「ございます」には、「で」「ございます」をつなげることで、「です」と似た働きをする使い方があります。
それでは、「です」を「でございます」に置き換えてみましょう。
「これは犬です」「これは犬でございます」
「それは私です」「それは私でございます」
「日本の首都は東京です」「日本の首都は東京でございます」
おや?いけそうですね。
いえいえ、もう少しお付き合いください。
■「ございます」の本来の意味
これまで「で+ございます」について見てきましたが、「ございます」単独の意味は「ある」です。
「紙がある」「紙がございます」
「車はある」「車はございます」
「お金ならある」「お金ならございます」
「無理である」「無理でございます」
「ある」は“物”が「ある」のです。
(人が)「いる」「います」という言葉を丁寧に言う場合には「いらっしゃいます」という言葉が別に用意されています。
例えば、人ではない「言葉」に対して、「言葉が用意されていらっしゃいます」というのがおかしいのと同様、人に対して「山田様でございます」はおかしいのです。
■「私が責任者でございます」
ここまで読んでくださった方は、「私が山田でございます」「私が責任者でございます」「彼が上司の山田でございます」という言い方が単なる丁寧語ではなく、物に対して使う言葉を自分側に使うことで、聞き手の前でへりくだって発言している謙譲語なのだということが分かるのではないでしょうか。
■「です」は、使う相手により「で+ございます」と「で+いらっしゃいます」を使い分ける
ここまでの説明をまとめましょう。
「です」をより丁寧言う言い方には「で+ございます」「で+いらっしゃいます」がある。
立てたい人には「いらっしゃいます」、それ以外には「でございます」を使う。
以下に、「いらっしゃいます」と「ございます」の使い分けの例を挙げました。
例1)「きれいですね」
立てたい人には ⇒ 「奥様はおきれいでいらっしゃいますね」
それ以外には ⇒ 「花がきれいでございますね」
例2)「山田です」
立てたい人には ⇒ 「こちらが山田様でいらっしゃいます」
それ以外には ⇒ 「私が山田でございます」
例3)「休みです」
立てたい人には ⇒ 「山田様はお休みでいらっしゃいますか」
それ以外には ⇒ 「休みでございます」
「です」と「ございます」の関係、「でございます」と「でいらっしゃいます」の使い分けはすっきりしましたか?
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それでは、また。