とある書籍に「本書をご購入された云々」と記載されていました。「ご(お)~された」という言い方は、この書籍に限らず、多く見られる敬語の誤用です。
■謙譲語と尊敬語のMIX敬語
「ご購入された」の「された」は受身形ですが、元に戻せば「した」です。
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「ご購入した」は謙譲語なので、「した」の部分だけを受身形の尊敬語である「された」にしても尊敬語とは呼べません。(「ご」を付けない「購入された」、「した(された)」ではなく「ご購入になった」であれば正しい尊敬語です。)
それにしても、出版されている書籍ですから、校正もされているはずなのになぜ……、という気持ちにはなります。
もう数年もすれば、「ご購入された」は正しい敬語と認められるかもしれません。尊敬語も謙譲語も気にする必要がないということになれば、敬語を使うのがとても簡単になりそうです。
■簡単な敬意を敬意と呼べるのか
簡単な敬意で十分なときもあります。そしてそのために用意された、受身形の尊敬語が既にあります。更に言えば、書籍にこの文章を載せた人が、簡単な敬意で十分だと判断してこの言葉を選んだとは思えません。
逆に、言われたほうの立場として考えたときに、「ご購入された」という敬語(?)が気にならないという人もいるでしょう。ではそのような人は、この言葉からどのような敬意を感じ取るでしょうか。
「私に向かって話しているんだから、きっと私に敬語を使ってくれているんだろう」
これは、言葉からではなく、状況から勝手に推測しているにすぎません。(尊敬語と謙譲語が混ざっているのですから、具体的にどんな気持ちを伝えたいのかは分かるはずがありません)
このように、何も言っていないに等しいにも関わらず、互いが言ったつもり、言ってもらったつもりになって流していく人間関係とはどのようなものだろうかと思うと、あまり「お(ご)~される」が正しい敬語にはなってほしくないと思っています。
それでは、また。