お持ち帰らないで下さい#気になる敬語

昨今、プラスチックごみが大きな問題となり、レジ袋も来年には有料化されそうな気配です。

それにしても、このポスターからすると、1つしか商品を買わないのに10枚も20枚もナイロン袋を持って帰る人がいるということなのでしょう。

店側も困っているのでしょうが、それをこのようにポスターにしてお客さまに伝えるというのは、そのようなお客さまをも傷つけないよう配慮していますという敬意の表れです。

 

■ポスターで注意するのは、口頭注意よりも婉曲な表現

買い物をしてくださったお客さまに対して、他のお客さまもいらっしゃる前で注意をすれば角が立ちます。皆の前で恥をかかされたお客さまは、その店に行きづらくなってしまうかもしれません。かといって、バックヤードにお客さまを呼び出してはもっと険悪です。

 

しかし、だからと言って何も言わずに店の備品を無制限に持ち帰られるのを見過ごすわけにはいきません。それでも言わなければならないほど困っているときに、紙に書いて読んでもらえば、少なくとも直接対峙することが避けられます。お客さま全員が読めるところに張り出すことで、特定の誰かを指定することも避けられます。敬意とは婉曲表現ですから、これも立派な敬意表現なのです。

 

■「お」は文章にはつかない

さて、問題は「お持ち帰らないで下さい」という言葉です。

「お」は何にでも付くというものではありません。

動詞・名詞・形容詞・副詞、色々なものに付きますが、文章には付きません。

この場合、「持ち帰る」という動詞には付きますが、「持ち帰らないで下さい」という文章に付けることはできません。

 

■行為の主体を立てる場合の敬語は「お+動詞+になる」

この文面の場合、持ち帰るのはお客さま(目上)の行為ですから主体尊敬を表すことになりますが、主体尊敬の場合の敬語は「お持ち帰りになる」です。

「お持ち帰りになる」の否定形は「お持ち帰りにならない」です。

つまり、正しい言い方は「お持ち帰りにならないでください」です。

 

「お+動詞+になる」をもとにしてから変化させる

敬語は、まず基本の形があって、それを否定形にしたり可能形にしたりします。

否定形にしたものに「お」を付けたり、可能形にしてから「お」付けると、おかしな日本語になってしまいますので、ご注意ください。

 

それでは、また。