「勉強になります」ってわざとらしくないですか?
飲み会で目上の人の話を聞くときに、「なるほど」と言ってしまうという受講生の方から頂いた質問です。
あなたはどう感じますか?
たしかになぁと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
「なるほど」の代わりにどんな言い方があるかと聞かれたので、「勉強になります」という受け答えを一つの例として挙げたところ、表題の質問になりました。
■「なるほど」には評価が入る
まず「なるほど」がなぜ目上の方の前で使えないかということを説明しましょう。
「なるほど」という言葉を言い換えると「確かにあなたの言うことは正しいですね」という辺りになるかと思います。「さすがですね」「素晴らしいですね」というニュアンスが含まれることもあるでしょう。
「正しい」「さすが」「素晴らしい」、これらは全て評価の言葉です。目下であるはずの人が、目上の人の話に対して、正しいか間違っているかの判断を下していることになってしまいます。これでは立場が逆転しています。つまり、失礼です。
もちろん、目上と言っても程度は様々です。
毎日顔を合わせてしょっちゅう冗談を言い合うような関係であれば、「なるほど」と言ってもおかしくないかもしれません。かえって「勉強になります」と言うことで、水臭いと取られるような関係性であれば、「なるほど」もよいでしょう。しかし、「なるほど」と言って、相手や周囲に緊張が走るようであれば、ちょっと考えなおしてもよいのではないでしょうか。
■「勉強になります」はわざとらしいか
わざとらしいとは、心にもないことを言って不自然であることが見た目にも明らかな状態ということでしょう。
まったくそのとおりで、目上の話を聞いたときに、なんら勉強になることなどないと感じているのに「勉強になります」と言えばそれはわざとらしく嫌みにすらなり得ることは間違いありません。
そして、それは全ての敬語に当てはまることです。
敬意を表現する手段として敬語があるのであり、気持ちなどなくても敬語さえ使えば失礼には当たらないと思っている人がいれば、その心構えこそがまずもって失礼と言えます。
「勉強になります」と言うということは、まず目上の人の発言から何かを学ぼうという姿勢で聞いているということが前提としてなければならないのです。
■敬語から心構えを知る
私はストリートアカデミーで敬語を教えていますが、敬語を正しく使えることよりも、敬意を正しく持つことのほうがよほど重要だと考えています。
敬意とは一つの感情ですが、放っておけば誰もが自然に感じるようになるというようなものではありません。社会の中の今この状況で、自分の目的を達成するために主体的に選ぶ姿勢のことです。
学校でもそんな授業はありませんし、会社の新入社員研修でもあまり聞いたことはありません。そんな中、敬意について教えてくれるのは、敬語です。敬語から遡って考えることで、ビジネスに必要な敬意も見えてきます。
口先だけの敬語ではなく、考え方としての敬語に興味を持ってほしいと思います。
それでは、また。