近所のスーパーで見つけたポスターです。
アイスクリームや鮮魚などを持ち帰る際に氷をくれるという気の利いたお店です。
そして、気になったのは「~てございます」という言い方です。
別のスーパーでも、「調理してございます」「切ってございます」「仕入れてございます」などいろいろな「~てございます」がアナウンスされています。
■「~てございます」をお勧めしない理由
この「~てございます」ですが、賛否両論ある言葉遣いです。
そこで、私としては「~てございます」はお勧めしておりません。
賛否両論あって、使わなくても済むものなら使わなければいいじゃないかというのが理由です。使わなくても他の言い回しができるので困りません。
例えば、「氷を用意しております」「既に切っております」「たくさん仕入れております」などです。「ございます」調を使いたいという場合には「調理済みでございます」「氷の用意がございます」という言い方もできます。
■「ある」と言えないものは「ございます」にもできない
賛否両論とはいえ、どちらの考え方の人も共通して間違いだと判断するであろうものは「ある」以外を「ございます」にしている場合です
。例えば「思ってございます」のように「思ってある」の時点でおかしいものは敬語にしてもおかしいのです。
※「思ってござる」のように方言として使われることはあります。
■「ある」の他に「いる」「おく」などの言い換えができる場合はそちらを使う
「資料を置いてございます」の場合、「資料を置いてあります」とも言えるので、賛成派の人たちはこの言い方は正しいということになりますが、反対派の人たちから見れば、「置いてある」の「ある」は存在の「ある」ではないから間違いであるということになります。
■「ございます」調にするならば、元の文章にも格式が求められる
さらに付け加えたいのは、「資料を置いてあります」は口語レベルであれば構いませんが、「ございます」調が求められるような、より格式の高い場所で使う言葉としてはいかがなものかという点です。
「資料を置いてあります」は主語が省略されています。さて、省略されている主語はなんでしょうか。「資料」は既に目的語として使われているので、主語にはなり得ません。すると「私」だったり「彼」だったり、人が主語として置かれるはずですが、「私が資料を置いてあります」としても、「彼が資料を置いてあります」としても不自然です。敬語には、主語を省略できるという機能がありますが、元の文章の段階で主語が分からないものを敬語にしても主語が明示されることにはなりません。
上司「おい、君。頼んだ仕事はどうだ?」
部下「大丈夫です。やってあります!」
こんな会話を改める必要はありませんが、くだけた言葉遣いをただ敬語に置き換えただけでは、聞かされているほうは何だかイライラしてしまいます。
(「やってあります」をそのまま敬語に置き換えると「致してございます」になります。これを読むだけで何だかイライラ、ムズムズしませんか?)
全体を「ございます」調にしたいなら、まずは主語や助詞を省略せず理路整然とした文章を作りましょう。無理やり「ございます」をくっつけてもゴテゴテした印象にしかなりません。
「ございます」を含む「です」と「ます」の使い方についてはストリートアカデミーで開催している講座【敬語各論】知りたいことだけ!選べる4つの敬語講座でも詳しく解説しています。(4つの中から、文をすっきりさせる「です」「ます」の省き方をご用命ください)
ご興味のある方はどうぞ右のバナーからストリートアカデミーも覗いてみてくださいませ。
それでは、また。