敬語を理解するためには、例外よりも基本を押さえる

 

■「御仏壇」は正しいか

基本的に、「御花束」「御留守番電話」など単語と単語がくっついてできた複合語に「御」はつけませんという説明をしたところ、「御仏壇」はどうなんでしょうという質問が出ました。

 

確かに「仏壇」は「仏様を安置する壇」なので複合語と言えます。そして、「仏壇」は多くの人が「御仏壇」と「御」を付けていることでしょう。私もそうです。

それであれば、複合語に「御」は付くのでしょうか。

 

例外ではなく基本を、テンプレートではなくルールを

それでも私は、”基本的に、複合語には「御」が付かない”と言います。

 

私が敬語を学ぶうえで、一つ障害になったのは、例外の多さでした。

二重敬語は間違いと言いつつ、「お伺いする」はOKで、今や「お伺いいたします」もOKになりました。カタカナや外来語に「御」は付けられないと言いつつ「おトイレ」も多くの人が使っているでしょう。「御仏壇」や「おトイレ」など基本原則から外れてはいるが、一般に使われていることを”慣用”といいます。

要するに「使っていい例外」ということですが、このような例外の多さは、敬語初心者にとっては混乱のもとになります。「おビール」が慣用なのか例外なのか、スナックやクラブに行く機会が多い人たちと少ない人たちでアンケートを採ったら、回答が変わりそうです。

 

また、同じ「御」という一文字が、主体尊敬と受け手尊敬と美化語のそれぞれで使われるため、そのことが分かるまでは、”何にでもとりあえず「御」をつけておけばよい”ように見えていました

 

ネットで情報を探しても、いろんな人がいろんなことを言っています。本を読んでもそうです。今から考えれば本当に杜撰な敬語の説明が書かれているサイトもありましたが、基本が分からないと、間違ったことを説明されていても正しいことを説明されていてもその判別がつかないのです。

 

しかし、ほんの少しでも基本が分かると、質の悪い情報を判別することができます。質の悪い情報に振り回されることがなくなり、自分の中に敬語についての軸ができると、「敬語についてこういう考え方をする人たちと、ああいう考え方をする人たちがいる」などと周りを見渡すことができるようにもなります。

 

そのような経験を踏まえ、多くの人が敬語を少しでも簡単に理解するためには、例外を取り除いて基本を取り出し、それを整理して説明することが必要だと思っています。

 

それでは、また。