コールセンターって心を病むんですよね

■電話応対研修を受講してくださった方からの質問

電話応対研修を受講してくださった方から、最後に質問されました。

「コールセンターって心を病むんですよね。」

 

いやいや、そんなわけないじゃないですか!

そんなところに18年いた私は、とっくに廃人じゃありませんか!

電話応対研修なんかを開催している私は、不幸のスーパー・スプレッダーじゃありませんか!

 

とんでもない!

ただ座って、上司から教わったことを話しているだけで「ありがとう」と言ってもらえてお給料がもらえる、こんな素晴らしい仕事があるものか。若かりし私はいたく感動したものです。

 

そこで、コールセンターで働いたことのない友人にも聞いてみました。

すると回答は、

 「コールセンターに勤めていると、ストレスで万引きとか窃盗とかしちゃうって

  テレビで言ってたよ」

とのことでした。

 

なんですと!?テレビでそんなことを広めているなんて(怒)

 

ということで、今回は敬語のお話を一回お休みして、コールセンターで心を病むかどうかをテーマにします!

 

■コールセンターかどうかに関わらず、ブラック企業であれば病む

サービス残業やパワハラ、セクハラに悩まされている会社であれば、それは病むかもしれません。

 

私が勤めていたときは、「24時間働けますか♪(リゲイン)」の名残がまだありましたから、100時間残業程度ならばゴロゴロいましたね。

しかし、今はそのようなことはないはずです。コールセンターも大手であればあるほど、法令遵守で残業に厳しくなりました。

 

パワハラについても同様です。コールセンターでは、大体SVという役職の人が、現場のトップに当たります。

このSVによってコールセンターの雰囲気はかなり変わります。また、そのコールセンターに仕事を委託しているクライアント企業の締め付け具合によってもかなり影響を受けます。

※例えば、「絶対にクレームは起こすな」なんて言われても、そんなことあり得ませんよね。営業で例えれば、目標10件が妥当なラインなのに、その目標を1000件に設定されて追い立てられるようなものです。絶対にできないことを要求されるとつらいです。

 

それにしても、上司が書類で部下の横っ面をはたきながら「てめえみたいなのを給料泥棒って言うんだよ、お前なんて辞めてしまえ!」なんていう光景は昔のドラマの中にしかありません。まして、コールセンターは人手不足で、働き手は貴重な人材です。今は、パワハラやセクハラがあったときに相談できる窓口を用意し、会社として取り組んでいるところが多いでしょう。また、コールセンターは女性が多いため、男女差別は見たことがありません。もちろん全てのコールセンターを見て回ったわけではありませんが、パワハラやセクハラも、比較的少ないのではないでしょうか。

 

ただし、人と人の関係なので、職場に合う合わないということはあるでしょう。

上司や周囲の人たちが合うか合わないかによって居心地が変わるのは、どこの企業も同じです。

 

では、コールセンター独特の要件について考えていきましょう。

 

■感情労働(=サービス業)であるということが分からない人にはつらい

 ーーー●●に関する問い合わせ対応。

    未経験でもマニュアルを見ながら対応できるので簡単。

    駅直結で雨でも濡れずに出勤できます。ーーー

 

こんな募集内容を見て、

「ああ、マニュアルを読み上げる仕事なんだ」

と思って仕事に就いた人は、ショックを受けることになるかもしれません。おそらくマニュアルを読み上げている限り、この人にはクレームが付いてくるでしょうから。

 

もちろん、優しい人はたくさんいますので、そういう人はマニュアルを読み上げていることが分かっても、「ありがとう」と言ってくれます。

 

ただ、感情労働であることを理解して働いている人のクレーム率が0.1%だとしたら、読み上げている人のクレーム率は10%かもしれません。

 

そこで、自分なりに気づくことができればよいのですが、クレームにならない9割の人を普通と捉え(実際には、9割の人は対応が悪くても文句も言わない優しいお客さまなのです)、残りの1割を”クレーマー”としてしか見ることができなければ、自身の電話応対を改善しようとも思えないでしょう。他の人の100倍クレームに対応していたら、それも理不尽な”クレーマー”に責められているとしか思えなければ、それは心を病む原因になるかもしれません。

 

仕事の対象はマニュアルではなく人です。

コールセンターは事務作業ではなくサービス業です。

電話の向こうにいる人が笑顔になってくれるような応対をすれば、双方ともにハッピーになるはずです。

サボろうとすればするほど、つらくなり、頑張れば頑張るほど楽しくなるのが電話応対の仕事です。

 

■スキルやノウハウが蓄積されない会社はつらい

コールセンターは非正規雇用が多く、給料も高いとは言えません。

そして、それはコールセンターの会社で働く正社員も同じで、下手をすると非正規雇用の従業員よりも手取りが安かったりします。更に、その正社員は転職組でコールセンター経験がなかったりします。

 

すると、どうなるか。

 

なるべく面倒なことやよく分からないことには首を突っ込まず、SVに任せておこうという姿勢になります。

SVに不満があるアルバイトの話も傾聴し、SVの不満も傾聴し、コールセンターを委託するクライアント企業の話も傾聴し、上司の話も傾聴する。そんな、”誰にも嫌われないように何もしない”術だけを身につけた正社員も中にはいます。自身を、コールセンターを運営する会社の社員ではなく、一つの職場に複数名の派遣を送り込んだコーディネーターであるかのように認識しているのかもしれません。

例えば

 「自分はそのコールセンターに働き手を送り込むまでが仕事でそこから先は

  SVの仕事。本当は自分のところに相談に来ないような運営をしてほしい

  んだけど、SVも人間だし、働いている全員に何の不満もないなんて、

  そんな理想的なコールセンター運営なんてできないのが当然だから、

  自分がはけ口になってあげよう」

なんて思っているのかもしれません。

 

そういう正社員が多いと、SVが改善できないことは改善されません。改善されても正社員が把握していないので、そのSVのスキルとしてしか残りませんし、似たようなことがあっても参考にできません。会社のスキルにならないのです。

 

本来であれば、マニュアルにしてもトークスキルにしてもトラブル対応や改善ノウハウにしても、全て会社が持っていなければならないものです。

 

コールセンターでの仕事を検討している人へのアドバイスとしては、SVが優秀であればもちろんそれでいいのですが、SVに不満があり、かつ、”すっごく共感して話を聞いてくれるけれども何もしてくれない社員”がいたら、その会社は辞めたほうがいいかもしれません。

 

他に良いコールセンターはいくらでもありますよ。

 

■電話応対は心が豊かになる仕事です

コールセンターは全国各地にあり、経験者は喜ばれます。

時間も比較的自由になるところが多く、副業や、夢を追いかけるための生活費を稼ぐ場所としてはうってつけです。

 

電話では見た目も関係ありません。会社によってタトゥー禁止や金髪禁止などのルールを設けているところもありますが、本質的には、電話をくれたその人のために、どれだけ配慮できるか、対面でもないのにどれだけ触れ合えるか、それが大切な仕事です。

 

電話応対は、やればやるほど心が豊かになる仕事だと思いますよ。

興味がある方は、ぜひトライしてみてください!

 

それでは、また。