現在、JR東日本で「機動戦士ガンダムスタンプラリー あなたならできるわ。」が行われています。
■機動戦士ガンダム
1979年、ガンダムの初回放送を見た私は衝撃を受け、これは毎回絶対に見なければならないと心に誓いました。
戦争で家族が死ぬ。その家族にすがりついて泣き叫ぶ子どもの頬をぶって避難させる。
そんなロボットアニメはそれまでありませんでした。幼かったときの私にとって、それは、突然に大人の世界を覗き見たような衝撃でした。
と、そんなことを思い出したので、このブログでもガンダムを取り上げてみたいと思います。
■第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」
衝撃を受けたシーンは幾つもありますが、今回はその中でも、シャリア・ブルがギレンの質問に答えるシーンを取り上げます。
ガンダムは、10代の少年少女が否応なく戦争に巻き込まれていく話ですが、ここで取り上げるシャリア・ブルはロマンスグレーの紳士です。大人のシャリア・ブルが、上長であるギレン・ザビの質問に以下のように答えます。
わたくしには閣下の深いお考えは分かりません。
しかし、分かるように努力するつもりであります。
もちろん、シャリア・ブルにはギレンの考えが分かっているのですが、それを口にすることはしません。自身の立場をわきまえると、言ってよいことがこれしかなかったので、このように言ったのです。
日本語は、プライバシーに敏感な言葉です。「あなたはこう感じている」「あなたの考えはこうだ」ということ自体、時と状況を選ばないと失礼にあたることのほうが多いでしょう。
ここではギレンから、自分の考えていることが分かるかどうかはっきりと言葉で質問された場面ですが、その考えを自分の口から言うことが、シャリア・ブルにははばかられたのです。
■分からない状態を受け入れること
ギレンとシャリア・ブルのやり取りから少し離れてみましょう。実はシャリア・ブルのこの言葉は、一般社会、特にビジネスの場において、立てるべき人の前で持つべき心構えを端的に表しています。
まずは、分からない状態を受け入れることです。
なぜこの仕事が必要なのか、なぜこういう手順になっているのか、なぜそれを他ならぬ自分がやらなければならないのか等々、組織の中では、分からないことが沢山あります。もちろん、そこには理由があり目的があります。聞けば教えてもらえることもあるでしょう。しかし、全体を見通せない立場に居る以上、全てを明らかに理解することは難しい場合もあります。そのことを分かっていることが大切なのです。それを無理に分かろうとすれば、人からは差し出がましい行為と映るかもしれません。さらに分からないからやらない、やりたくないと主張すれば、周りから見れば単なるわがままとも取られかねません。
1時間目「立てる」とはでも書いたとおり、「余計なことを知ろうとしない」ことは敬意なのです。
■分かるように努力し続けること
それでは、「言われたことだけやればいい。余計なことに興味はない」という姿勢が敬意かというと、もちろんそんなことはありません。
この作業にどういう意味があるのだろう。この仕事が次にどうやってつながっていくのだろう。このような意識を持って仕事にあたる人と、何の興味も持たずに仕事にあたる人と、どちらが敬意を感じるかといえば、もちろん前者です。
分かればすっきりします。逆に興味を持たず、分かろうとしなければ、その不安定さも見ずに済みます。一方、分からない状態のままでいることはとても不安定です。
その不安定な状態のままでいることは非常にストレスフルです。(四六時中「なんでこんなことを毎日毎日やらなくちゃいけないんだ!」と思いながら働いている人がいたら、とてもつらいであろうことは、容易に想像できるのではないでしょうか。)そこで、このストレスフルな状態を避けるためには、自分を分からせるよう人に要求するか、その問題な状況自体を無視ししてしまうかのどちらかが簡単な解決策です。しかしこのような手段に頼ることは、ストレス耐性の弱い人や、モチベーションの低い人、と思われてしまいます。もちろん、そのように周囲から思われることは自身にとってマイナスです。それでいいと分かって行う人は別として、単にビジネスにおける敬意というものを理解していないがために、「こいつはストレスに弱い奴だ」「やる気のない奴だ」などと思われてはもったいないことです。
それでは敬意をもって仕事にあたるとはどういうことかというと、仕事に興味を持ち、自分に与えられた仕事の意味や目的などを分かるように努力しながら作業に取り組むことです。そのような姿勢で仕事に取り組む人は、日々のトライ&エラーでなにがしかの実感を得ることができます。つまり、「分かるように努力し続ける」ということは、仕事に対し、主体性をもって積極的に取り組むということです。
■分からない状態を受け入れ、分かるように努力し続ける人は、組織からも尊重される
相手を尊重し適切に配慮するためには、その相手への関心と積極的な主体性が求められますが、その姿勢は、仕事に取り組む姿勢と共通します。働ける状況に感謝し、仕事を大切に行うなら、仕事への関心と積極的な主体性が生まれます。
そして(独裁者であるザビ家のギレンとは異なり、通常の組織であれば)、「分からない状態を受けれいる」心のしなやかさと「分かるように努力し続ける」主体性を持ち合わせた人は、組織からも尊重されます。なぜならこの人がまず組織を尊重しているからです。
これが、相互尊重です。
それでは、また。
※機動戦士ガンダムをまだご覧になったことがない人は、機会があったら一度ご覧になってみてください。
また、JR東日本を日常的にお使いの人は「機動戦士ガンダムスタンプラリー あなたならできるわ。」も参加してみてはいかがでしょうか。