4月も終わりました。4月から新入社員になった人は1カ月が過ぎました。そろそろ叱られることも出てきたのではないでしょうか。
職場では、謝罪する機会が多くあります。この謝罪がきちんとできるかどうかで、周囲の人が持つあなたへの信頼が変わってきます。
もちろん、大人になるまで謝ったことがないという人はあまりいないと思います。家庭や学校、友人関係でも、謝る機会はあったことでしょう。しかし謝るとはどういうことなのか、じっくりと考えたことがある人はあまりいないのではないでしょうか。
大人が子どもに要求することは「ゴメンナサイ」と言うことであり、「ゴメンナサイ」すれば許してもらえたり、仲直りできたりします。しかし、大人の謝罪は「ゴメンナサイ」すれば許してもらえるというものでもなければ、そもそも仲直りをすることが目的でもありません。
前回まで、社会人として、誤解してはいけない「素直」という言葉について説明をしてきましたが、今回は社会人として大切な「謝罪」について説明したいと思います。
謝罪をgoo辞書で引くと「罪や過ちをわびること。」とあります。
■謝罪とは、誰かに迷惑をかけたときにするもの
職場は仕事をするために人が集まっているところです。
そこで叱られたということは、何かあなたの行為が間違っていたか、するべき行為をしていなかったということです。間違って行われたことや、されているはずのことがされなかったことで、その仕事に関係する誰かが迷惑を被っています。
あなたが新入社員であれば、多くの場合、叱ってくれた人が、実際に迷惑になる前に気づいて修正してくれていますが、その場合、叱ってくれた人には、修正するという手間と叱るという手間との、二つの迷惑がかかっています。
叱られるということは、自分の気づかなった間違いを気づかせてくれる手間のことですから、叱られてヘソを曲げてはお門違いです。「叱られるうちが花」というように、手間をかけて育てようと思わない人を、人は叱りません。
■謝罪とは、それが自分の責任であると認めること
コミュニケーションの指南書やサイトに書いてあることを読むと、ミスをしても許される謝り方が具体的なセリフとともに載っています。例えば、「自分の責任と潔く認めましょう。言い訳をすると形だけの謝罪だと見破られてしまいます」というなアドバイスです。しかし、どれだけ謝罪の仕方がうまくても、それが行動と認識を伴わない形だけの言葉であれば、職場の人にとっては紛らわしくかえって迷惑です。
自分の責任であると認めることとは「自分の責任です」と言えばいいということではありません。言い訳を口にしなければいいということでもありません。トーンを落として申し訳なさそうに言うということも、謝罪の本質ではありません。
謝罪し、それが自分の責任であると認めることとは、言葉を換えれば、誰かに迷惑をかける元となった行為や考え方を改め、今後は期待どおりの結果を出すという約束です。
したがって、謝罪した後に同じミスを繰り返したならば、周りの人は「自分の行動に責任を持てない人だ」「自分の責任範囲として任せた部分のコントロールができないなら、もっと責任範囲を狭めないといけない」と認識し、仕事を任せられないと判断されかねません。
逆に、結果は同じミスであっても、行動に変化があり対策の跡が見られるならば、単純に同じミスを繰り返す場合とは異なる評価になるものです。
もし、自分の責任だとは認識しているが、どのように対策を立てればよいか分からないなら、同じミスを繰り返す前に上司や先輩に相談をしましょう。
■間違った謝罪のケース
A君は入社早々遅刻をし、上司から叱られたのできちんと謝ったのですが、その後も遅刻は続き、最近は上司から「何時に寝ているのか」「どうせゲームでもやっているんじゃないのか」「飲みに行くんじゃないだろうな」などと言われます。都度、上司を怒らせないように一生懸命頭を下げていますが、プライバシーにかかわることを言われるのはパワハラではないかと感じ、とても不快な思いをしています。
①迷惑をかけている認識があるか
A君が、「遅刻をしてもその分は残業しているんだから勤務時間は他の人と同じじゃないか」「自分が遅刻しただけであって、誰かの仕事を邪魔しているわけじゃないんだからいいじゃないか」「フレックス出勤制度がないこの会社が古いんだ」などと思っていて、空気を読んで謝罪はしたけれど迷惑をかけているとは思っていないとしたら、A君が口にした謝罪は本来の謝罪ではありません。
②自分の責任であると認めているか
上司は、A君のことを自分の生活をコントロールできない人と判断しているようです。それに対し、A君も「確かに自分は生活のコントロールができていない」と納得し「上司が本来しなくてよいような自分の生活の心配をしてくれている」と受け止めて、上司に生活の管理を任せるならまだよいのですが、上司に寝る時間まで管理されるのは嫌だと感じているようです。通常はそのように感じる人のほうが多いでしょう。それであれば、仕事に影響を及ぼさないように、自分で管理すべき範囲は誰に言われなくとも管理しなければなりません。
※上司の側に立って考えてみましょう
上司も、必要が無いのにプライバシーに踏み込んでいるわけではありません。本来やらなくていいはずのことをしているので手間も増えますし、人に言って気分の良い内容の話でもありません。「なんで俺が部下の寝る時間まで気にしなくちゃいけないんだ。俺は幼稚園の先生じゃないぞ。」と独り言ちているかもしれません。
では、それなのになぜパワハラまがいのことを上司がするかと言えば、それがA君一人の問題ではないからです。上司は自分の管理する全体に責任があるので、周囲のモチベーションに影響するかもしれないA君の遅刻を容認するわけにはいきません。
遅刻を直せないA君は大事なミーティングや仕事の期日にも遅れるかもしれないことを考えると、A君に任せる仕事も考え直さなければならず、予定していた教育スケジュールも組みなおさなければいけないかもしれません。それらは、この後に控えている人事異動や、課せられたノルマの達成に影響を及ぼすかもしれません。
そのように、上司は上司で様々なことを念頭に置いてA君の遅刻を直そうとしているのに、これを万が一にもパワハラと受け止めるなら、上司はもうA君とコミュニケーションが取れなくなるでしょう。
③対策が立てられるか
自分の責任と認めたならば、具体的に行動を変えなければなりません。今までよりも早く職場に着くためには、今までよりも早く家を出なければなりませんし、そのためには今までよりも早く寝て早く起きる必要があるかもしれません。
「いやあ、学校でも遅刻ばっかりだったから、いまさら無理だな」と対策を放棄すれば問題は①に戻ってしまいます。
もし、遅刻せざるを得ない理由があるのであれば、それは正直に伝えて上司と一緒に対策を講じるべきです。例えば妊娠中で、混雑した電車を避けなければならないというようなことです。(正当な理由があるのに適切な対策を講じてくれないのであれば、その時には然るべき部署へ相談しましょう。)
さて、今回は職場での謝罪について述べてきましたが、私はこれらを、「申し訳ございません」の弊害ではないかと思っています。
それについては、来週、説明をいたします。
それでは、また。
※使用した写真は「ぱくたそ」のフリー素材です。
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