部下として、自分の責任だけを考える

ここのところ、新入社員向け心構え講座のようなブログが続いているので、一方の上司については、何を言っても構わず自分の好き勝手に振る舞ってよい、と解釈された方もいるかもしれません。しかし、そうではありません。

 

敬語は、自分の責任について考える言葉であり他者を責める言葉ではない、ということをお伝えしたいのです。

とは言ってもイメージしづらいかと思いますので、今回と次回のブログでは部下の責任と上司の責任について説明したいと思います。

 

■上司もただの人にすぎない

上司は頭がよく、冷静で、人情味に厚く、人望があり、時に笑いを誘って場を和ませ、時に皆のモチベーションを高めて困難を乗り切り、先見性を持ち、それでいておごり高ぶることのない、優れた指導力を発揮する人格者でしょうか。

もちろん、そんな上司であればその下で働く部下は幸せかもしれません。

しかし、そのような上司はなかなか、いません。上司もただの人だからです。

 

上司であっても、判断を誤ってミスをしたり、感情的になって余計な一言をつい言ってしまったりするでしょう。そんな上司を「上司失格だ!」と断罪したら、きっと会社を回せるだけの上司は残りません。

 

■部下もただの人にすぎない

機械であれば、スイッチを押せば決まった動きをします。プログラムが組まれていれば、その通りに動きます。動かないときは壊れているときです。

しかし、人間はそうではありません。うっかり忘れることもあれば、勘違いをすることもあります。指示を出したらその通りに動くなんていうことはありません。

 

人間にミスをするな、絶対に忘れるな、と言うのは人間であるなと言っているのと同じことです。上司が指示をしたなら、部下は一分も違わずその通りに動くはずと思っているなら、そんな上司の下で働く部下は人間として認められていないのと同じです。

 

上司も部下も、失敗もすれば欠点もある、ただの人にすぎません。

お互いに敬語を使うということは、相手をただの人として受け入れつつ、相手の自尊心を尊重する気持ちを伝えあうということです。

 

■上司も部下も、ただの役割にすぎない

社長以下誰もが平等であり役職は一切ない、という会社があってもよいとは思いますが、現状での多数派である「上司ー部下」というピラミッド型組織制度を採用している会社は、社長から平社員までを貫くライン(=指揮系統の流れ)で指示や情報が行き交います。その指示系統が時に逆転したり、情報がラインから外れて別のラインに流れていっては混乱を来します。ピラミッド型組織制度の各ライン上に位置する人は、各々の立場を守り、それぞれの責任を果たすことが大事なのです。

 

それでは、それぞれの責任とは何でしょうか。

 

■部下としての責任を考える

上司がやらせたい仕事なのだから上司が分かりやすく伝えるべきではないのでしょうか。上司がやらせたい仕事なのだから、部下のモチベーションが上がるように工夫しなければならないのは上司なのではないでしょうか。

 

そのように考える人もいるかもしれませんが、その指示の出し方が下手かどうかは上司が考えるべき問題であり、部下が考えるべき問題ではないというのが、敬語の考え方です。

 

自分が部下の立場で、上司から指示を受ける場合、敬語では「指示をお受けする」と表現されます。「お受けする」とはこの場合上司を立てる受け手尊敬であり、その意味するところは、私が責任を持ってその行為を行うと同時に相手の行為を自然現象のように捉え、それを批判したり操作しようとせず、ましてや否定しないということです。

 

もし、指示を実行するために足りない情報があるなら、上司に教えていただかなければなりません。なぜ「いただく」なのか。自分の責任を果たすために、相手に手間をかけるから「いただく」で感謝を表すのです。それを、必要な情報が足りない駄目な指示だと捉えたら、それは相手を引き下げる行為であり、敬意に反します。

 

■責任を果たす報連相

指示を実行することで想定されるリスクがあったり、実行していく中で見えてきたリスクがあれば報告しなければなりません。なぜなら、それは自分の責任を超えたことであり、自分の責任を超えたことは同一ライン上の上司の責任であるからです。報告がなければ上司は自身の責任を果たそうにも果たすことができません。

(逆を言えば、報告を受けたなら、そこから先は上司の責任です)

 

一方、本来は自分の責任なのにそれが果たせないとしたら、どうでしょう。例えば先週のブログに書いた、遅刻のような場合です。

自分で約束した時間に来るということが自分の責任であるということを認識したうえで、どうしても自分で解決できないなら、上司に相談することになります。

それは、もちろん恥ずかしいことだけれども、上司に迷惑をかけることが見えているのにそのままにはしておけないからです。決して責任放棄であってはなりません。アドバイスを受けたなら、そのアドバイスによって自分で責任を持って果たせるようになることが目的です。

 

そして、その進捗などを適宜、連絡します。

自分の仕事なのだから誰にも進捗を共有する必要はないと考えていたら、その人は自分を社内で独立した存在と考えていることになります。”自分の仕事は誰かの仕事につながっていて自分が手を抜けば誰かが困る”、”突発的なトラブルも含めて、いつなんどき誰かに助けてもらわなければいけないことが起きるかもしれない、そのときに自分が今何をやっているのか上司すら知らないということがないようにしておかなければ”そのような認識があれば、連絡の重要性を理解できると思います。

  

次回は上司の責任について見てまいります。

それでは、また。