コウペンちゃんをご存じですか。
赤ちゃんペンギンで、どんな些細なことでも肯定してくれる人気のキャラクターです。
先日はなまるうどんの前を通りがかったときに、コウペンちゃんの可愛いポスターに目が留まりました。
そのポスターに書かれていたキャッチフレーズが下記です。
はなまるうどんの店員さんなコウペンちゃん達に会える!
今回のテーマは、この「な」です。
■2つの「な」
この「な」の使い方が、なんとなく日本語としておかしいと感じる方は多いと思いますが、文法的にも説明しておきます。
①形容動詞の一部
「小さなコウペンちゃん」や「利口なコウペンちゃん」であれば違和感を覚えることはありません。この「小さな」や「利口な」は形容動詞です。
この場合の「な」は形容動詞の一部なので、「な」だけを切り離すことはできません。
②助動詞「だ」の連体形
「信号が赤だ」。この「だ」は、「な」に変化(活用)します。
例えば「信号が赤なので止まった」や「信号が赤なのに渡った」ということです。
体言の後に付く助動詞の「な」は「ので」と「のに」にしか連なりません。
■形容動詞のような使い方
一方、「店員さん」はもちろん形容動詞ではありませんので、「店員さんな」の「な」も形容動詞の一部ではありません。
しかし、助動詞だとすると「店員さんなので」か「店員さんなのに」になるはずですが、それとも異なっています。
文の構成から見ると、「店員さんな」は「コウペンちゃん」を修飾しています。これでは、あたかも形容動詞のような使い方です。
「赤な花」と言わないように「店員さんなコウペンちゃん」は本来間違った使い方です。
■正しい日本語では何と言うか
もしこのキャッチフレーズを正しい日本語で言ったら下記のようになるでしょう。
はなまるうどんの店員さんになったコウペンちゃん達に会える!
こんな言い方もできるかもしれません。
はなまるうどんの店員さんのようなコウペンちゃん達に会える!
こんな言い方はどうでしょう。
はなまるうどんの店員さんのかっこうをしたコウペンちゃん達に会える!
これらのフレーズは、通りがかりの人の目を留めることができるでしょうか。
私が書いたこれらのフレーズと比べ、ポスターのフレーズはコウペンちゃんの赤ちゃんらしさが出ています。
■洒落が分かる日本人であってほしい
私は、このキャッチフレーズを文法的に間違っているからと否定するつもりはありません。
ただし、本来の正しい日本語が分かったうえで、あえてそれを崩すから工夫なのです。洒落だけでなく、冗談や嫌み、そして配慮もあえて基本を崩すことで表現されます。
正しい日本語と間違った日本語の区別が付かないのは、単に恥ずかしいだけでなく、豊かな言葉遊びの世界を知ることができないということです。
このキャッチフレーズを読んで文法的に間違っていることが何となくにでも分からない人は、このキャッチフレーズが一ひねりしたものであることも分かり得ません。正しい日本語を見失っては、洒落の分からない人間になってしまいます。冗談や嫌みや配慮も分からない人間は、きっとそれらを使いこなして人に自分の気持ちを上手に伝えることもできないでしょう。
言葉遊びを楽しみ、細やかな人の気持ちを感じ取るためにも、正しい日本語を身につけてほしいと思います。
はなまるうどんにもぜひ行ってみてくださいね。
それでは、また。