今回は、ある店頭で見つけたポスターです。
「遊戯」ではなく「遊技」ということは、麻雀、パチンコなど一部業種に限られるわけですが、この間違いは一部業に限らず、非常に多く見られます。
以前の記事で、「ご~される」はなぜ間違いかということを詳説しました。
結論だけ言えば、相手を立てたり自分を立てたりして意味の分からない言葉ということでした。
「ご~される」と客に向かって言うということは
「俺様の大切な客」と言われるようなものです。
そこで、今回は別の角度から説明をしましょう。
■「ご~される」という敬語の型はない
遊技をするその人を立てたい(=その動詞の行為主体者を立てたい)という目的で使える型は基本的に以下の3つです。
※「~」には動詞が入ります(ここを詳しく説明すると、ややこしくなるので、いったん「動詞」とざっくりまとめておきます)
①受身形 「~れる」「~される」
例:座られる、確認される など
②付加形 「ご~になる」「お~になる」
例:ご確認になる お座りになる など
③特定形 その動詞ごとに特定の形があるもの
例:召し上がる いらっしゃる など
この3つの型のどれにも当てはまっていないので、こんな使い方はないということになるのです。
■3つの型から適切なものを選ぶ
それでは、この3つの型がどんなときでも使えるのか、どれを使ってもいいのかというと、そういうわけではありません。
この動詞にはどの型が使えるのか、複数の型が使える場合にはどれが一番自分の言いたいことにぴったり合うか、という2点を自分で確かめて言葉を選ぶ必要があります。
今回の例でいうとこのようになります。
①受身形 遊技される
②付加形 ご遊技になる
③特定形 遊技なさる
この中から表現したい敬度に合わせて選ぶということになります。
さて、ここで「敬度」という言葉が出てきましたので補足しておきます。
■敬度とは
「敬度」とは、立てたい対象に払う敬意の度合いという意味です。お辞儀に置き換えれば、軽い会釈でいいのか、きちんとお辞儀をする必要があるのかということです。
同じ動詞に対して、受身形・付加形・特定形の3つが使えるなら、この順番で敬度が高くなります。
そこで、ビジネス敬語の基本としては、受身形は使わず、付加形か特定形を使うということになります。
しかし、ここで、もう一つ問題があります。
それは、そもそも「遊技」がスル動詞にならないということです。
■スル動詞とは
スル動詞とは、「勉強する」「返信する」のように「名詞+スル」の形をとって動詞になった言葉です。
ただし、名詞であればなんでもスル動詞になるわけではありません。
例えば「お茶する?」はスル動詞ではなく、仲間内という関係性でのみ使える省略された言い回しであり、ビジネスであれば「お茶でもいかがですか」と言わなければなりません。
「遊技」も「スル」が付かない名詞なので、①②③が使えません。
※「お茶する?」のように、フランクな口語として使うということなら構いませんが、正しい文章としては使えないということです。
■正しい敬語で書いたポスターの例
遊技をなさる
すべてのお客様に
快適な空間をお届けします。
いかがでしょうか。
それでは、また。