敬語を知らないとは、例えばこういうこと

先日、とあるバラエティー番組を見ていたところ、人気の女性お笑いタレントが出ていた。『徹子の部屋』に出演したときの話を聞いて、愕然とした。

( 以下は、私の記憶による言葉である。実際の発言とは多少異なるであろうことをご容赦いただきたい。)

 

タレント:『徹子の部屋』のスタッフってね、黒柳さんのこと、呼び捨てなんだよ。びっくりした。

司会者:どんなふうに言ってたの。

タレント:「まず黒柳がこう言いますから、その後……」とか。

 

私は敬語を「敬意を伝え、人間関係を見える化するツール」と考えているが、敬語のルールを知らなければ、それは全く伝わらない。伝わらないどころか、逆の意味として伝わっている。

 

■身内に対する敬語は抑制される

スタッフが呼び捨てにしたのは、身内に対する敬語は抑制されるというルールに従っているからだ。

 

例えば就職のための面接で家族について聞かれたときに「うちのお母さんは」と答える人はいないだろう。誰も「母は」と言うはずだ。このようなルールである。

 

■「黒柳がこう言いますから」から見える人間関係

敬語は人間関係を見える化すると書いた。

では、この言葉から、どのような人間関係が見えるのか。

 

①スタッフが、黒柳徹子を身内と見ていること(=強い信頼関係が築かれていること)。そして、この女性タレントを外部の人間として立て、尊重していること。

 

②おそらくはこのスタッフが黒柳徹子よりも若いであろうこと、今や最も古い『徹子の部屋』のスタッフは黒柳徹子自身であろうことを考えると、おそらくこのルールを最も重要視している人物も黒柳徹子自身であろうこと。

 

③(前項の仮説が合っているとすれば)黒柳徹子の方針に厳密に従っているスタッフは、黒柳徹子を信頼し敬意を払っていること。

 

さらに、分かることがある。この女性タレントが驚いたということは、他の番組ではそのようなことが無かったのだろう。ということは、他の番組スタッフと比べて、礼儀を重んじる傾向が強いということだ。

 

このタレントは、スタッフが黒柳徹子を軽んじていると解釈しているようだが、それは全く異なるということがお分かりいただけただろうか。

 

※もしかすると、お笑いタレントとして、分かっているけれども分からないフリをしただけかもしれない。しかし、お笑い界の先輩であればいざ知らず、この発言は黒柳徹子もスタッフをも貶めている。彼らがそんなことに目くじらを立てるとは思わないが、これが違和感なく世間に受け入れられたのだろうか、そして女性タレントと一緒に笑っていた視聴者がどのくらいいるのだろうかと思うと空恐ろしい。これでは、私が呼び捨てにしているのも失礼だという誹りに遭うかもしれない。

 

それでは、また。

 

★敬語講座の受講をご希望の方は、どうぞ以下のURLからお申し込みください。ささやかですが、500円OFFでお申し込みになれます。

 

コメント: 0