今回は、「される」が受身なのか敬語なのかというご質問を頂戴しましたので、それにお答えしてまいります。
結論から言うと、受身形であり、敬語でもあります。
しかし、これでは分かったような分からないような状態のままかと思います。
少々ややこしいかもしれませんが、ご説明にお付き合いください。
まず受身形について説明します。
■受身形とは
受身形とは、動詞の語幹にareruを付けた形のことです。
例)
書く kak+areru = 書かれる
起きる okir+areru = 起きられる
出る der+areru = 出られる
する s+areru = される
「来られる」などの例外はありますが、上記のように理解しておくと、ら抜き言葉(「起きれる」など)や、れ足す言葉(「書けれる」など)を避けやすくなります。
叱られる、ほめられる、笑われる、愛される、見られる、認められる、などは全て受身形です。
■受身形の4つの意味
そして、この受身形には、4つの意味があります。
それが、受身、可能、自発、尊敬です。
①受身=他者から何かをされる
例)誰かに財布を盗まれた。
②可能=何かができる
例)苦手なピーマンが食べられた
③自発=勝手にそうなる
例)秋になると、あの人のことが思い出される
④尊敬=その行為をする人を立てて表現する
例)先生も行かれるそうだ
この4つの根底には、「自分がやったのではない」という意味があります。
受身はもちろん他者から何かをされているのですから分かりやすいのですが、「可能」も本当なら自分にはできないはずのことができたわけですし、「自発」は自分でやろうとしたわけでもないのに勝手にそうなるということです。
そして、それが、尊敬表現にもつながります。
■敬意は、立てたい人の行為をあたかもその人の行為でないかのように表現する
敬語とは婉曲表現です。行為者を立てるときには、あたかもその人の行為でないかのように表現します。
本当は先生が、先生みずからの意志で行くと宣言したにもかかわらず、「行かれる」とまるで他者からされたかのように、もしくは勝手にそうなったかのように表現することで、敬意を表すのです。
■「される」で完成した敬語
「それは先生がされるから、そのままにしておいてください」
「出来上がったものは、1つ1つ先生が確認されます」
これらの例のように「される」「確認される」は正しい敬語です。
「それは先生がおされるから」とは決して言わないように、
「1つ1つ先生がご確認される」などと余計なものを付けないようにしてください。
これでは、まさしく不要な足を描いてヘビではなくなってしまった蛇足と同じで、敬語としての意味をなさなくなってしまいます。
くれぐれもご注意されてください。
それでは、また。