敬語とお辞儀

2021年初のブログです。

コロナが勢いを増す中、皆さんのご健康を何よりお祈り申し上げます。

さて、今回は読者の方から頂いた、”気になること”について一緒に考えたいと思います。

 

女の人が自分のおへそに両手を当ててお辞儀をする所作に違和感をお持ちのその方は、礼儀作法の所作の意味と心を敬語で表すとどうなるかがいつも気になる、とのことです。

 

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お辞儀をする女性のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20161042288post-9236.html

■敵意が無いことを表す

お辞儀のときに手を前で組むのは、刀を持つ手である右手を左手で隠すことで、敵意のないことを表すという説明を聞いたことがあります。
一方で、小笠原流ではお辞儀をするときに手を重ねることは間違っていると教えているそうです。
どちらが正しいのか、恥ずかしながら立ち居振る舞いについての正確な知識がない私には、判断ができません。

また、読者の方は「女の人が」と特定していました。男性が行っているのを私も見たことはありますが、男性よりも女性にこの所作が多いようです。
ということは、やはりジェンダーも影響しているのでしょう。当然ながら、このようなお辞儀は自宅や友達の前では行われません。女性だけが無性に手を重ねたくなるわけでもなければ、おなかに手をもっていきたくなる衝動に駆られるということはないでしょう。
つまり職場から、このように指示、もしくは無言の期待を受けて行っているわけです。

しかし、今回はジェンダーに深入りするのはやめて、所作と言葉の関係に絞りたいと思います。

■所作と言葉の関係

叉手

お辞儀ではありませんが、上皇上皇后両陛下のお写真です。
上皇后は右手の上に左手を添えていますが、とても自然ですね。気品もあり、でも決して偉そうにしているようには見えません。

では、おへそに両手をあてているようにしか見えないお辞儀とは何が違うのでしょうか。

それが、この自然かどうかということだと考えます。

■そこに敬意はあるのか

敬語を使っても敬意が伝わってこない人がいます。
「とりあえず、言葉の頭に”お”を付けて置けばいいんでしょ」だったり、
「マニュアルに書いてあることをそのまま言ってるんだから、これでいいでしょ」だったりという姿勢が透けて見えてしまう人たちです。
そのような場合、なんでもかんでも”お”が付いて不自然だったり、場にそぐわない言葉を言ったりしているのに、言っている本人は無頓着だったりします。

もちろん、型から入るということはあります。学ぶは”真似ぶ”ことから始まるとも言います。
しかし、「とりあえず○○しておけばいいんでしょ」という行為に気持ちはありません。それを何百回何千回繰り返そうと、それでは型だけで終わってしまいます。マニュアルに書かれていることを覚え、研修で教わった言葉を繰り返しているだけでは、単なる条件反射にすぎないのです。

おそらくこの読者の方は、この敬語の場合と同様に、敬意から頭が下がるのではなく、ただマニュアル通りに行っているということが透けて見えるお辞儀に違和感を覚えたのではないでしょうか。

まるで敬礼か何かのように、ちゃんとお辞儀をしているアピールのように感じられたり、表情が伴っていなかったり。人間は微妙な差からその人の本心を感じ取ります。型が気持ちと比べてわざとらしければ、それも敏感に察するものです。

■自然と湧き上がるもの

敬意は、自然と湧き上がるものです。

しかしそれは、誰からも教わる必要がないということではありません。
赤ちゃんにそのまま何も教えることなく、栄養分や適切な温度管理だけで育てたら、いったいどんな人間ができあがるでしょうか。考えるだけで恐ろしいですね。
小さいときにあの花はきれいだね、お月様はきれいだね、と教わってはじめて”きれい”という概念を自分のものにすることができ、たとえ初めて見たものであっても、きれいだなという想いが湧き上がるようになります。これは、どんな天才であっても変わりません。

同様に、人への思いやり、配慮、そして敬意を教わってはじめて自分のものにすることができます。自分のものになれば、”言われたからやる”から、自然と湧き上がるものへと変わります。

最後に、読者の方からの言葉を引用させていただきます。
このような素晴らしい言葉をくださり、ありがとうございました。

きっと、言葉で言えば敬語、動作で表せば礼儀。
その心は思いやりとか、敬意とか優しさとか、そのようなもの
おそらく、敬語をきちんと使えるようになれば、人生はもっと楽しいはずではないかともおもいます。

それでは、また。

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