二重敬語とは、一つの単語を2回以上敬語に変換してしまうものです。
読んで字のごとくなので、分かったような気になりがちですが、一度きちんと押さえておきましょう。
■正しい変換
ある行為を行ったその人を立てる敬語としては、受身形、付加形、特定形の三つがあります。
例えば「食べる」という動詞を上記の3種に変換してみましょう。
受身形 → 食べられる
付加形 → お食べになる
特定形 → 召し上がる
これらは正しい敬語の形です。
■二重敬語の例
次に、同じ「食べる」という動詞を使って、あえて二重敬語を作ってみましょう。
受身形+付加形 → お食べになられる
受身形+特定形 → 召し上がられる
付加形+特定形 → お召し上がりになる
受身形+付加形+特定形 → お召し上がりになられる
「お召し上がりになる」は二重敬語ですが、既に定着し、正しい敬語として認められています。また3種の敬語変換を全て行えば三重敬語ですが、この場合も「二重敬語」と呼ばれます。
なお、二重敬語は必ず異なる形の組み合わせであり、同じ形を2回使うことはできません。(付加形+付加形で「おお食べになりになる」という人や、受身形+受身形で「食べられられる」という人はさすがにいません)
■二重敬語と間違いやすいもの
「お召し上がりになる」のように本来は二重敬語でも現在は正しい日本語として認められている言葉もある一方、二重敬語ではないのに二重敬語と勘違いされやすい言葉もあります。そのような言葉をご紹介します。
①ご覧になる
「ご覧になる」は特定形です。
「あちらをご覧ください」というように「見る」の特定形として「ご覧」を使うことはもちろん正しい用法です。
ところが、「ご覧になる」では、特定形なのに付加形の「ご~になる」が含まれているため、二重敬語と勘違いされやすい言葉です。しかし、逆に「ご」と「になる」を外してしまうと「覧」しか残らないことになってしまいます。
また「ご覧」のままでは動詞としての活用ができません。
「見たいですか」を敬語にするためには「ご覧になりたいですか」としなければなりませんので、「ご覧になる」は正しい用法です。
②おなりになる
「おなりになる」は付加形です。
「なる」が2回出ているので、二重敬語ではないかと思ってしまうかもしれません。
しかし、「なる」という動詞の前後に「お」と「になる」を付加すれば「おなりになる」であり、社長の息子が跡を継いで二代目社長になったのを見守っていた副社長が、「内心、少し心配をしていたが、3年たって随分と社長らしくおなりになった」と言うならば、それは正しい用法です。
二重敬語について、お分かりいただけたでしょうか。
それでは、また。