方言にみられる敬語

どの地域にも、その地域固有の方言があります。

普段は方言を使わないという人も、故郷に帰ると自然と方言で話してしまうという経験があるのではないでしょうか。

 

どなたもご存じのように日本語には多くの方言があり、敬語にも方言があります。

 

関西弁では「さん」と、より親しみをこめた「はん」を使い分けるほか、標準語では禁忌であるところの身内敬語も見られます。

「お父さんおって?」
「お父はんならいてはりますよ」

禁忌と書きましたが、日本も昔は絶対敬語でした。

したがって、この関西弁の使い方は、古い絶対敬語の名残ではないかとも言わています。

 

他にも関西では、「~できない」ということを「よう~せん」と言いますが、これは古語で習った言葉で言えば「え~【打消し】」に相当します。

も言われ心地よさ」は「言うこともできない(言葉にできない)心地よさ」という意味で、古い言い回しが残っている慣用句ですが、関西弁ではこれを日常的に用いて「5キロもよう歩かわ。タクシーで行こ」などと言っているわけです。

※たまに文章にしたときや、堅苦しい場面で話すときに、「お父さん、おられますか?」「5キロもよく歩きません」と直している人を見ますが、これは標準語ではありません。標準語にしたいのであれば「お父さんはいらっしゃいますか?」「5キロも歩けません」としてください。


一方で東北地方南部や関東地方北部など、敬語にあたるものがない方言もあります。それでは、その地域に敬意はないのかというと、もちろんそんなことはありません。人が社会の中で生きていて、上下がないなどありえません。
目線、姿勢、口調、様々な方法で敬意を表現します。

 

そのような各地の方言における敬語を、国がどのように考えているか、『敬語の指針』から抜粋しましょう。

方言の敬語の存在、それらの形や使い方の多様性は、それぞれの地域社会の日常の言語生活を豊かなものにする上で、欠かせない重要な働きをしている。全国共通語の敬語と並ぶものとして、将来にわたって大切にしていくことが必要である。(p.8)

敬語の指針では、方言の敬語を大切にするよう述べているのです。
今は、地方でも若い人が方言を使わなくなってきていると聞きます。

どうぞ、自分が生まれ育った土地の言葉や文化を大切にしてください。

 

それでは、また。