ポジティブなコミュニケーションの重要性について語っている動画を見た。
ネガティブなコミュニケーションは聞く人を傷つけやすく、成功よりも失敗へと誘いやすい。内容は、全くそのとおりだと納得させられるものであった。
ほめることばかりでなく、しっかりと相手のためを思ってしかることの重要性なども説いており、いまどきパワハラを恐れて及び腰になっているとなかなか言えないことである。素晴らしいと感じた。
もう六十を過ぎていようかというその講師は、しっかりと訓練した様子で流ちょうに説明している。「超●●ですよねぇ」などと話しているのは、若い聴衆がいることを想定し、聞き手に伝わりやすい言葉を選ぶ配慮であろう。普段、使うことはないであろうその言葉遣いからは人柄の謙虚さがにじむ。また、多少の過剰敬語は、誰が見ているか分からない動画では、ある程度やむを得ないとも思われた。
そんな中でも、一つだけ気になった言葉遣いがあった。それは「お会社さん」である。
■「お会社さん」は正しい日本語ではない
最初は言い間違いか、私の聞き間違いかと思った。
しかし、「いろんなお会社さんが」「お会社さんでは」などと繰り返し使っているところからすると、意識的に使っているとしか思えない。
「お会社さん」という言い方が流行りはじめているのだろうかとインターネットを検索してみた。
”お会社”や、”会社さん”が正しいかを問う記事はすぐに見つかった(もちろん正式な文法としては間違いだ)が、「お会社さん」はヒットしなかった。
この講師の個人的な言い方であろうか。
もしかすると、「お店屋さんごっこ」というままごと遊びがあるように「お店屋さん」という言葉があるなら「お会社さん」もあるはず、と考えてしまったのかもしれない。
お父さん、お医者さんなど、「お●さん」という言葉はあるが、これは●の部分に自由に言葉を入れてよいものではない。「お店屋さん」は子どもの言葉づかいである。
敬語は正しく使わないと、”あえて敬語にした意味”がそこに生まれてしまう。
例えば、役所の仕事に「お」を付けて「お役所仕事」と言えば、そこに敬意を感じる人はいない。
この講師の話し方から、もちろん敬意を表したいのであろうことは伝わったが、言葉としては「いろいろな会社が」「会社では」でよい。
ビジネスでよく使われるスラングとしても、「会社さん」ぐらいで留めておいてもらいたいものである。