遅刻した部下への言い方から、人間関係を見る

最近はパワハラだモラハラだと言われ、部下への対応に上司が躊躇(ちゅうちょ)することが増えました。部下に敬語を使うという企業は、おそらく50年前と比べたら大きく増えたのではないでしょうか。

 

そこで、今回は遅刻した部下に何と言うべきかについて考えてみたいと思います。

 

■遅刻した部下への2つの対応例

 

【上司A】

「前回、遅刻されたときにも、会社としてはあなたに改善してくださいと依頼をしてきましたが、今回で遅刻が5回目です。定時に出社するのは難しいでしょうかね」

と笑顔で確認する。

 

【上司B】

 

「何回遅刻すれば気が済むんだ。おまえ、5回目だぞ。会社なめてんのか。それとも俺をバカにしてんのか。夜中にゲームばっかりやってるんじゃないだろうな」

と怒る。

 

上司Aと上司B、どちらの対応が正解でしょうか。

あなたなら、どちらの上司の下で働きたいですか。

 

■どちらも正しい、ただ見えている人間関係が異なる

 

 実は、どちらの上司の対応も日本語としては間違ってはいません。

ただ、敬語の使い方から判断して、2人の上司は自分の責任範囲と人間関係の捉え方が異なっています。

 

【上司A】

①部下との距離の取り方 ーーー> 遠い

②部下が遅刻をしないようにするのは誰の責任か ーーー> 部下

③遅刻が改善されなければ、この後どうするか 
 ーーー> クビにする。人事権がなければ自分の上司に相談する。もしくは遅刻しても影響のない仕事しかさせない。

 

【上司B】

①部下との距離の取り方 ーーー> 近い

②部下が遅刻をしないようにするのは誰の責任か ーーー> 自分

③遅刻が改善されなければ、この後どうするか 
 ーーー> 改善するまで指導する。

 

上司Aは、部下を成長させることよりも、自分がパワハラと思われるような言動を取ることのないように注力しています。

もしくは、その人を変えるのではなく、その人のできることを与えるのが上司の役目だと考えている場合や、そもそも長く勤めるべきという考えはなく、合っていない仕事を無理に続けるべきではないと考えている場合も、このようなコミュニケーションになるでしょう。

 

一方、上司Bは部下をどこへ出しても恥ずかしくない会社員にするのが自分の役目とばかりに指導しています。「叱られるうちが花」と言われるのはこのような上司が部下の育成に一生懸命だからです。自分が指導した部下が他部署へ異動になり、その部署から「あいつは使えない」など部下の悪い話を聞いたら、きっと「いや、あいつにはそうはいってもこんな良い面もあるんだ」と擁護してくれることでしょう。

もしくは、上司の言うことはどんなことであっても従うのが当然で、従わない者には何を言っても構わないと考えている場合や、Bの上司から「遅刻率を改善せよ」という指示があってもどのようにしたらよいか分からないという場合も、このようなコミュニケーションになるかもしれません。

 

さて、もう一度。

上司Aと上司B、どちらの対応が正解でしょうか。

 

あなたなら、どちらの上司の下で働きたいですか。

 

■会社におけるコミュニケーションの在り方

 

これは、どちらがいい悪いという話ではなく、関係が変われば言葉づかいも変わるという話です。

 

昔、高度経済成長期は、上司Bが普通でした。

しかし今は、会社の在り方も、働き方も、雇用形態も変わっています。

 

今回は分かりやすく極端な2例を挙げましたが、実際にはこの間に無限のバリエーションがあります。

 

自社ではどのようなコミュニケーションを取るのか、多様性が求められる今、それを個人任せにせず、会社が考え、決めるべきではないでしょうか。

 

ただ、今すでに組織の中で働いている人は、会社が決めてくれるのを待っているわけにはいきません。部下であるあなたは、今、どうしたらいいのでしょうか。

 

上司Aと働くときには、自分が改善しない場合上司はどうしようと考えているのか、読み取るようにしたほうがよいと思います。

 

そして、上司Bと働くときにも、すぐ怒る嫌な人、と決めつけるのは少し待ってください。単に自分は偉くて何を言っても構わないと思っているのか、自分を育てようと躍起になってくれているのか、Bの上司から指示にどう動いたらよいか分からなくて部下に責任を押し付けているだけなのかを見極めたうえで自分の対応を考えましょう。

 

最後に、上司であるあなたも、社内で取るべきコミュニケーションと自分の取っているコミュニケーションが合っているかどうか、振り返ってみてください。

 

それでは、また。