残暑お見舞い申し上げます。
暦の上では秋とはいえ、暑い日が続いております。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
さて、この「残暑お見舞い申し上げます」は「残暑の見舞いを言う」という文を敬語を使って述べたものではありません。
敬語を取り除くと「残暑(の中のあなたを)見舞う」という文になります。
■「言う」という意味の「申し上げる」
「そのことは私から社長に申し上げよう」
「店長からお客さまに申し上げました」
上記の例文から敬語を省くと下記になります。
「そのことは私から社長に言おう」
「店長から客に言った」
この場合、「申し上げる」とは「言う」という動作を指します。
■「する」という意味の「申し上げる」もある
「次のご来店をお待ち申し上げております」
「あなたをお慕い申し上げる」
上記の例文は「待つと言う」という意味や「慕うと言う」という意味ではありません。
一段階、敬意の度合いを下げると下記の文になります。
「次のご来店をお待ちしております」
「あなたをお慕いする」
動詞を「お」と「する」で挟む「お~する」という敬語の公式が現れました。動詞の行為を行う主体ではなく、受け手を立てる敬語です。
「お待ちする」であれば、「待つ」という行為の主体(=客の来店を待つ店側)ではなく、「待つ」という行為の受け手(=店に待たれている客側)を立てています。
同様に「お慕いする」であれば慕う側ではなく慕われる側を立てています。
※詳しくは接頭辞「お」「ご」をご覧ください
■「御」は敬語としての特別な使い方をすることを表す
(「待つ」なら「お待ちする」、「提出する」なら「ご提出する」のように、付く言葉によって「お」だったり「ご」だったりするので、以降は「御」と漢字でまとめます)
この「御」が付くと「敬語だけに許された特別な文法を使いますよ」という印になります。
上記の例でいえば「待ちする」「慕いする」という日本語はありませんが、「御」を付けて「御待ちする」「御慕いする」とすることで敬語という特別な文法になり、通常のルールとは異なることを示しています。
※「提出する」の場合、もともと「御」を付けなくても「する」が付いている動詞なので分かりづらいのですが、「御提出する」とした場合は「御~する」という敬語の公式にあてはめますので、「提出する」に「御」が付くのではなく、「御~する」の「~」部分に「提出」が入ると解釈します。
同様に「御~申し上げる」として「~」部分に動詞を入れると、「申し上げる」から「言う」の意味は消え、「御~する」よりもいっそう敬意を高める「上げる」のニュアンスを加える使い方ができます。
繰り返しますが、このような使い方は、必ず「御」とセットで用いられます。
「申し上げる」を単独で使ったときには「する」の意味にはなりませんのでご注意ください。
また、このように敬意の度合いが高い敬語は、面と向かって言葉を交わすには堅苦しくてなかなか使う機会がありません。ましてSNSで絵文字と一緒に使うような言葉でもありません。
普段から敬語を意識して使うために、たまには、はがきや手紙を出してみてはいかがでしょうか。
夏の疲れが出る頃です。皆さまご自愛ください。
それでは、また。