「頂く」と「戴く」の使い分け

読者の方より、下記のご質問を頂戴しました。

 


『いただく』の誤用・乱用の代表として、「頂く」「戴く」の漢字間違い。

 

  頂く:もらうの謙譲語
  戴く:対象が自分より非常に上、あるいは物品や品物に関わる時。
と、ありますが、未だに使い方が分かりません。

教えてください。


■漢字の使い方

漢字の使い方としては非常にシンプルで「いただく」の漢字表記としては「戴」は使いません。
なぜなら、常用外だからです。
常用漢字表の「戴」をご覧ください。

戴

読み方としては、「タイ」しかありません。
※「頂戴」がありますので「ダイ」も含むと解釈してください

一方、「頂」を見ると「いただく」の漢字表記として使えることが分かります。

画像3

したがって、全く迷う必要はありません。
「いただく」を漢字で書きたいときは「頂く」だけを使ってください。

ちなみに、常用漢字表とは、「⼀般の社会⽣活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すもの」という内閣の告示です。
常用漢字表にない漢字を使ったり、常用漢字表にない読み方で漢字を読ませてはいけないわけではありませんが、この目安に反するので常用外といわれます。

意味の違い

「頂」と「戴」をくっつけると「頂戴」という熟語になり、両方とも「もらう」という意味が含まれる類語です。

ただ、全く同じではありません。

常用漢字表を見ると、「戴」の例として「戴冠」が載っていましたよね。

「戴冠」は冠をもらうことではありません。
冠を頭に乗せることです。
それも、単に乗せることではありません。帽子なら頭に「乗せる」でもいいかもしれませんが、「戴冠」は
君主が即位したしるしに初めて宝冠を頭にのせること。(コトバンクより)
とあるように特別なのです。

一方、「頂」の項目を見ると、「頂上」「頂点」「絶頂」「山頂」とあるように「てっぺん」が根本の意味としてあることが分かります。

なので、本来の使い分けとしては「雪を戴く富士山」のように使います。
しかし、先に見たように「戴く」は常用外で使えないので、「雪を頂く富士山」と書きます。

ただし、ではなんでも「頂く」に置き換えられるかというと、「財界の大物を社長に頂く」ではあまりにもおかしいと感じるのが一般的な感覚ではないでしょうか。そのようなときは、「財界の大物を社長にいただく」と平仮名にしてください。

 次週は別の読者からのご質問、「お付き合いさせていただいております」を取り上げます。

それでは、また。


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