不自然な「お下見」を解説します#気になる敬語

緊急事態宣言も緩和され、酒を出す店からも活気が伝わってくるようになった。

そんな中、この看板を見つけた。

「冷やかし大歓迎」という看板なら見たことはあるが、「お下見大歓迎」は初めて見た気がする。

 

この看板のある店は、パーティができるような個室もあり、下見に来る客もいるであろうことは容易に想像できる。

客の行為であれば目上なのだから「お」を付けるべし、と考えたのも分かる。

しかし、これはいかがなものか。

 

■下見をするのは誰か

「見る」と「下見」は違う。

「下見」とは、事前に見て調べておくことを指す。

何のために事前に調べるのかといえば、パーティや飲み会がうまくいくように、参加者に満足してもらえる場所であるかどうかを確かめたいからだ。

下見に来た人も参加するかもしれないが、その人よりも目上の人や大切な人が来るからその人たちに粗相のないように、下見をする。

 

考えてみてほしい。社員一同が参加する忘年会の下見を社長がすることはないだろう。もし、事前に会場を見たいと社長が言ったなら、下見という言葉を避け、「社長が会場をご覧になりたいそうだ」という表現になる。

 

■逆の場合も当てはまる

これは、逆の場合にもあてはまる。

 

たとえば「買う」という言葉はそれだけで「客の行為」を意味する。したがって「お買いする」という店側を立てる敬語は立場と矛盾し、使えない。もし、それを押して使うなら、嫌みになってしまう。

だから、たとえば尊敬する人の経営する店で買い物をし、なんとかして店側を立てて表現するならば、「購入いたしました」「買わせていただきました」などの言葉を使う。

 

■何と言えばよいのか

「お下見大歓迎」がおかしいなら、なんと言えばよいのか。

一番シンプルな例は「お」を取ることだ。

 

「下見大歓迎」

 

難しく考えすぎる必要はない。これで、いいのだ。

では、また。