者 < 人 < 方

者(もの)とは

「狼藉者!」という言葉がありますね。
狼藉とは乱暴な振る舞いのことです。
そして者(もの)は物(もの)に通じ、同語源です。

つまり、「者」であれば人扱いしていないわけですから、「人」と表現するのは、「者」と表現するよりも、敬意のある表現です。

方(かた)とは

方とは、方角を表す言葉です。転じて、名前を呼んだり直接指し示したりすることがはばかられる尊い人を指すときに使われます。

つまり、「人」よりも「方」のほうが、敬意のある表現です。

自分を指して人(ひと)とは言わない

昔のことですが、「私って、コーヒー飲めないなんでぇ……」という言い方がはやり、おかしいと話題になりました。
それは、この「人」という表現に、軽いとはいえ敬意が込められている言葉だからです。

したがって、自分のことを言う場合には、
「私はコーヒーが苦手です」「私はコーヒーが飲めないものでして……」などと言い、「人」と言いたい場合には、「コーヒーが飲めない人間でして……。」などと、「人」の代わりに「人間」を使うしかありません。

方(かた)を使えば敬意を表す

「3軒目というも2割強になった」

これは、家を所有する人が増えたというニュースを報じるキャスターのセリフです。

 

「方」は尊い人を指すときの表現であると上述しました。

したがって、この言い方では、その番組スタッフが3軒も家を持つ人を敬うと同時に、この番組を見ている視聴者からしてもそのような人は敬うに値すると判断しているということを意味します。

 

しかし残念ながら、私は家をたくさん持っているという理由で人を敬おうとは思いません。

 

そもそも、家をたくさん持っているから、社長だから、大臣だからという理由で敬意を加える報道番組が信用できるでしょうか。

インタビューをさせてもらったということであれば別ですが、そのような特別な関係がないのであれば、「3軒目という人も2割強になった」と報じるのが適切です。

 

それでは、また。