「お送りします」はビジネス敬語としてギリセーフ?

先日、ネット上で以下の記事を見つけました。

敬語の誤りは決定的

適切なメールを書くためには、まず敬語の使い方を正しくすべき

敬語の使い方で生活環境が分かる

能力を示す機会はいろいろあるのですが、敬語を正しく使うのは、その中でも強力な手段の1つ

 

などと、敬語講師としては嬉しくなるような言葉が並んでいます。

 

しかしその一方で、気になる箇所が目に留まりました。

「お送りします」は許容表現?

それが、この部分です。


通常は、「資料をお送りします」と書きます。

「自分の行為に〈お〉をつけてよいのだろうか?」と

いつも気になるのですが、これは正しい表現です

(自分の行為に「お」をつけてよいのです)。

文化審議会答申は、

「相手を立てる表現だから、許容される」

としています。


「お送りします」が正しい表現かどうか分からないという人がいるのは仕方ないことでしょう。しかしこの書き方では、文化審議会答申に相手を立てる表現だから、許容されると書かれているかのように誤読させてしまいかねません。

 

私も慌てて、よもやそんなことが書いてあっただろうかと見直してしまいました。

 

念のために申し添えますが、もちろんそんな記載はありませんでした。関係ない別の箇所にあったものでもなく、「相手を立てる表現だから、許容される」という文自体が無かったのです。

数ある文化審議会答申のうち、敬語に関するものといえば『敬語の指針』以外にないと思われますが、一体この記事を書いた著者は何を見たのでしょうか……。

文化審議会答申(『敬語の指針』)の記載

文化審議会答申(『敬語の指針』)に興味のある方は、ぜひ全文をご覧ください。

 

「お送りします」に該当する箇所は27ページにあります。

しかも、【一般形の主な例】 として筆頭に挙げられているのが「お(ご)……する」 です。要するに、基本的な敬語の型のうちでも、最も基本的な敬語の型なのです。

まかり間違っても、「本来は間違いだが」もしくは「例外的に」「許容される」ものではありません。

まずは基本を押さえよう

今回私が気になったこの記事を書いたのは、名誉教授の肩書を持つ方です。

 

う~む、もしかすると教授は誰かの書いた記事に名前を貸しただけだろうか……。

そのサイトが差し向けたライターに問題があったのだろうか……。

 

いや、それにしても掲載されているのはビジネスマンを主な読者層と想定しているであろうサイトです。

 

考えても詮無きことなのでそれはさておき、敬語の最も基本的な型は以下の二つです。 


■行為主体を立てる「お(ご)……になる

 

■行為主体を立てない(受け手を立てる)「お(ご)……する


よしんば文学部の教授でなかろうとも、フリーのライターであろうとも、「敬語の誤りは決定的」と書くならば、この二つだけでもいいから覚えておいてもらいたいものです。

 

それでは、また。