「お持ち帰りいただけます」は常に正しいか?

先週は「お持ち帰りいただけます」という看板を見つけて嬉しかったという記事を書きました。

その記事に対して、読者の方より、「いただけます」とは尊敬と可能と許可を兼ねているのだろうか、とのご質問を頂戴しました。

そこで今回は「お持ち帰りいただけます」という言葉を、よりクローズアップしてお届けします。

分解します

まずは、「お持ち帰りいただけます」を細かく見ていきましょう。

 

①お持ち帰り

ここでは「持ち帰る」という行為を行う主体を立てています

 

②いただ

「もらう」という行為を行う主体を立てず、「もらう」が指している相手を立てています

 

③け

これが可能を表しています

 

④ます

この文章を読む人全員を立てています

 

「許可」はどこ?

上記①~④の中に、許可という説明はありませんでした。

実は、②に隠れています。

それが「もらう」です。

 

例えばBさんが、Aさんから千円もらったとしましょう。そのとき、AさんはBさんが自分の千円を持っていくことを許可しています。

 

もし、この許可なくBさんがAさんの千円を持っていったなら、その行為は「奪う」です。

あなたさえよろしければ/あなたの許可があれば

そこでもう一度表題を振り返ると、「(あなたが希望なさるのであれば弊店では)持ち帰ってもらえます」という意味になるのです。

 

逆に、この「許可」に反する文脈でこの言葉を使うとどうなるでしょうか。

例えば公園のベンチに空き缶を置いていこうとした人に向かって管理人が「あ、お持ち帰りいただけますよ」と笑顔で言えば、(行為としては正しくても)かなり強い嫌味になるでしょう。

一方で、「空き缶はお持ち帰りいただきます」と真顔で言われたら、命令より強い意味にもなります。

これを「すいませんが、お持ち帰りいただけますか?」にすれば随分と印象が和らぎます。

 

文脈と、ほんの少しの言葉の違いで意味が大きく変化するのを感じていただけましたでしょうか。

 

それでは、また。