「ご活用頂いて」いるのは誰?~#気になる敬語

先日、完全予約制のとんかつを食べてきました。その予約をするために登録したサイトから送られてきたDMに書かれていた言葉が今回のテーマです。

 

それが、こちら。



ちょっと写真で伏字にすると見づらいですね。

伏字部分を「当サイト」として書き直しましょうか。

 

そうすると下記の文章になります。


先日発表された、JAPAN TOP RESTAURANTSランキング上位10位のうち、7店舗が当サイトをご活用頂いております


サイトは誰が活用しているのか?

さて、当サイトを活用しているのは誰か分かりますか?

 

もちろん、「7店舗」でしょうね。しかし、なぜそう判断しましたか?

文章の中に、ほかに該当しそうなものがないから、というだけの理由に過ぎません。

 

いやいや、7店舗「が」と書かれているではないか。だから「7店舗」が主語だよ。

 

そう考えるかもしれません。確かに「7店舗」が主語で間違いありません。ではその「7店舗」は何をしたと書かれているでしょうか。

「ご活用頂いております」と書かれています。

敬語を外してみましょう。そうすると、こうなります。

 

「活用してもらっています」

活用してもらっている人は活用した人ではない

ここに、牛乳が嫌いな女の子がいたとしましょう。飲まないと先生に叱られるので、隣の席の男の子が代わりに飲んであげました。

 

さて、牛乳を飲んでもらったのは誰でしょう?・・・女の子ですね。

では、牛乳を飲んだのは誰でしょう?・・・男の子ですね。

飲んでもらった女の子と、飲んだ男の子は同一人物でしょうか?・・・同一人物ではあり得ませんね。

 

では本題です。

当サイトを活用してもらったのが「7店舗」であるとき、活用したのも「7店舗」であることは可能でしょうか?・・・不可能ですね。

 

再度、先の質問をしましょう。

さて、当サイトを活用しているのは誰か分かりますか?

・・・状況から想像することはできますが、文章からは読み取れません。

これが、質問の答えです。

正しくは何と言えばよいか

では、何と書いてあればよかったのでしょうか。一例を挙げます。


先日発表された、JAPAN TOP RESTAURANTSランキング上位10位のうち、7店舗当サイトをご活用頂いております


「が」を「に」に変えただけです。たった一文字の違いですが、意味は全く変わります。下の2文を見比べてください。

 

「彼風船をもらった」であれば、彼は風船を持っています。

「彼風船をもらった」であれば、彼は風船を一つ失っています。

たった一文字の違いで、意味は正反対になります。

 

ではこれは書き間違いだったのでしょうか。

それであれば大した問題ではありませんが、実はこのような間違いは散見されます。心配なのは、敬語に含まれる意味を忘れ、「敬語」をくっつけさえすればよいという文章の作り方になっていることです。意味のない敬語に敬意はあるのでしょうか。

 

せっかくランキング上位のレストランに「ご活用頂く」のであれば、それにふさわしい文章を添えてもらいたいものです。

 

それでは、また。


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