残暑お見舞い申し上げます。
秋とは名ばかりの厳しい暑さが続いております。皆さまつつがなくお過ごしください。
それでは、今回もよろしくお願いいたします。
先日、敬語講座の受講生の方から、メールの最後に「ご自愛してください」と付け加えてよいだろうかと質問を受けました。
そこで、それは間違った言葉遣いなので「ご自愛ください」をお使いくださいと答えました。
すると、「ご自愛ください」では少し寂しいから「お体ご自愛ください」でよいかと重ねて質問されました。
そこで、それも間違いなので、言葉数が少なくて物足りないなら「くれぐれもご自愛ください」ではいかがですかとご提案しました。
今回は、同じような疑問を持っている人に向けて、ご説明したいと思います。
「ご自愛ください」は「ご自愛してください」の省略形ではない
まず、「ご自愛ください」は「ご自愛してください」の省略形ではないということです。
「自愛」という名詞の頭に「ご」を付ければ、「自愛」という行為を行うその人を立てる敬語になりますが、「ご自愛する」では逆に「自愛」という行為を行うその人を立てない敬語になります。
※「ご自愛する」は例としてあえて書きましたが、誤った敬語の使い方です
※「する」が活用して「し(て)」になります
文字数が多いほど敬意の度合いが強いという原則はありますが、それはあくまで正しい敬語で比較したときのことです。たとえ字数は少なくても、正しい敬語と間違った敬語であれば正しい敬語をお使いください。
「お体ご自愛ください」は重言
重言とは、「馬から落ちて落馬した」のように同じ意味の言葉を重ねることをさします。
あえて使うこともあるかとは思いますが、一般的には冗長で煩わしいとされ、基本的には避けたほうがよいものです。
一方、「自愛」とは「病気などしないよう自分の体を大切にすること」という意味ですから、「体を自愛する」では重言になってしまいます。
したがって「お体」は付けず「ご自愛ください」だけでよいのです。
足すなら配慮を
それでも「ご自愛ください」では自分の表したい気持ちを表し切れていないと感じたら、どんな気持ちをもっと表したいのか自問してみてください。
「ほんっとに大切にしてねって言いたいの!」であれば
「くれぐれもご自愛ください」
でよいでしょう。
「お盆とか出掛けることもあるだろうけど、コロナだって収まってないし心配!」なのであれば、
「まだコロナも収まりません。お盆で帰省なさる際にはくれぐれもご自愛ください。」
と心のままを書けばよいと思います。
自分の中から湧き上がる配慮より心が伝わる言葉はありません。
自分の心の中にある美しいプレゼントを、美しい包装紙で包んで相手の方に気持ちよく受け取ってもらいたい。その包装紙が敬語です。
正しい敬語はネットで調べれば出てきますが、自分の気持ちは自分にしか分かりません。
どうぞ、ご自身の相手への想いを、素直に伝えてください。
それでは、また。