おかしな敬語「操作を頂けない」を解説します#気になる敬語

駐車場の看板には気になる敬語がたくさんあるのですが、知人から教えてもらった今回の看板もそのひとつです。

以前取り上げた気になる敬語

この看板の中には、複数の気になる敬語が含まれています。

 

その内、「利用できます」「未払い金扱いとなります」につきましては、以前取り上げました。

まず「ご~できます」について、本来は行為者を立てない敬語なので、客の行為を指して使うことはありません。

詳しくは2018/10/13の「ご(お)~できる」PART4#気になる敬語』や2018/7/28の「ご(お)~できる」Part3#気になる敬語』などをご覧ください。

 

次に「~となります」は、責任がある事柄について、まるで自然にそうなったかのように使われることがあります。

詳しくは、2021/8/27の『サングラスとなります~#気になる敬語』をご覧ください。

 

それでは、本日の本題へまいりましょう。

操作を頂く

否定形だと余計な要素が入ってしまうので、「操作を頂く」という肯定形で考えていきます。

 

「意見を頂く」などの似たような構文があるので、さらっと読んでしまうと何が問題か気付かないかもしれません。そういうときは、まず、敬語を使わない言葉に戻してみましょう。

 

■敬語を外す

「操作を頂く」 → 「操作をもらう」

こうするだけで、不自然さに気付く人も増えると思います。

つまり、それはもらえるものなのか?ということです。

 

「代金を頂く」

これであれば、全く正しい使い方です。敬語を外せば「代金をもらう」になります。代金とは、まさしくもらうものですよね。

 

では、物でなかったらどうでしょう。

 

「意見を頂く」

これも、正しい使い方です。他にも縁談や転職の誘いなどでは「良いお話を頂く」などとも言いますね。「意見をもらう」「良いお話し(縁談)をもらう」これも、敬語を外しても問題ありません。

抽象的なものであっても有難く受け取るときには物と同様の言い方ができます。

 

では、行為はどうでしょう。

 

「お話しいただく」

先の「お話を頂く」と違い、偉い人にみんなの前で話してもらうときには「お話しいただく」となります。これは、敬語を外すと「話しもらう」になります。「て」に該当する部分が元の敬語にはありません。

もし、「て」に該当する部分を加えるとこうなります。

 

”お話しになっていただく”

 

ちょっと、うっとうしいですね。

仰々しいほど敬語を使いたいときにはこれでいいのですが、普段使いの敬語にはそぐわないので、「て」を省いていいですよという、敬語だけに認められた特別ルールです。もちろん「を」の入る余地はありません。

 

これで問題点が見えてきたでしょうか。

「操作を頂く」の問題点

操作とは「もらう」ものではありませんので「頂く」ではなく「していただく」必要があります。

つまり、「操作をしていただく」が正しい言葉遣いです。

また、敬語の特別ルールを使って「ご操作いただく」という言い方は可能ですが、「ご」は基本的に単語と単語がくっついて一つの単語になった複合語にはつきませんので「ご精算操作いただく」とは言えません

したがって、やはり「精算操作をしていただく」としか言えないのです。

 

ちょっとこのあたりは分かりづらいところなので、なるべくポイントを絞って説明しました。

 

それでは、また。