突然ですが、回転寿司はお好きですか?
もしかしたら、こんな注意書きがレーンの上に乗っているのを見たことはありませんか?
お子様がレーンを廻っているとはどういうことだろうと、一瞬わが目を疑いました。
そう勘違いするのは私だけではないらしく、この注意書きはネットでも少し話題になっているようです。
句読点を入れる、改行する、語順を入れ替える等、いろいろな改善ができそうですが、敬語講師としての立場から、この文の問題点を説明したいと思います。
「です」「ます」を文の句切れでないところで使わない
文法的に言えば「節の中では対者敬語を抑える」ということになるので、これで分かる方は以下を読む必要はありません。ですが、なるべく小難しい言葉を使わずに敬語を説明したいので、よろしければお付き合いください。
「です」「ます」は文の句切れで使われる言葉です。したがって、これらの言葉が文中に出てくると、読み手は「、」「。」が続くことを予期します。
であるならば、「、」「。」を絶対入れてはならないところに「です」「ます」を入れてはいけないということです。
例を見てみましょう。
母が作りました(。)オムライスです。
たとえば、「お母さんが作ったオムライス」を目上に言おうと思ったとき、次のように言い直しがちです。
「母が作りましたオムライスです」
微妙な間やイントネーションを使うことができる口語であれば、「母が作りました」が次の「オムライス」を修飾していることが伝わります。しかし、文章に間やイントネーションはありません。
そして、目は構文を意識して文章を読みます。
すると「母が作りました」の後に、うっすらと句点(。)が見え、思考が突っかかります。「母が作りました」と「オムライス」がそれぞれ独立して見え、次におかしいと感じ、ようやく[修飾ー被修飾関係]にあると納得する経緯を辿るので、モヤっとしイラッとすることになるのです。
つまり、[修飾ー被修飾]にあるならば、切ってはいけません。したがって、このように修飾する部分では「です」「ます」は使わないのが基本であると覚えてください。
注意書きに戻ると、以下のように言い換えられます。
✖ レーンを廻っておりますお皿
〇 レーンを廻っているお皿
この注意書きにある、もう一つの間違い
実はこの写真の中に、もう一つ修飾している部分があるのを見つけられますか?
それがここです。
「直接触れませんようご注意をお願いいたします」
「直接触れませんよう」は「ご注意」に係っているのではなく、「お願いいたします」に係っています。
これも、別の例文を挙げてみましょう。
早く来ます(。)ように言ってきます。
開始時間になっても来ていない人がいたとき、「早く来るように言ってきます」と言う人はいても、「早く来ますように言ってきます」という人はいません。
これも「早く来るように」は「言う」を修飾している部分なので、偉い人に向かって話している場合であっても「ます」が抑えられるのです。
注意書きに戻ると、以下のように言い換えられます。
✖ 直接触れませんようお願いいたします
〇 直接触れることのないようお願いいたします
修正例
レーンを廻っているお寿司や商品に、
お子様が直接触れることのないようご配慮ください。
敬語を適切に使えば、文章はすっきりと読みやすくなります。
それでは、また。