「食券をお持ちになり」の誤解#気になる敬語

友人から、蕎麦屋に分かりづらい文章があったと教えてもらったのがこちらの画像です。

食券は自動券売機で購入します。

その券売機にこの掲示が貼ってあったら、どうしますか?

 

友人はどうしたかというと、食券(の半券)を店員に渡そうとしました。すると店員から、渡す必要はないから持ったまま席で待っているように言われたというのです。

「だったらこんな説明を書くな、分かりづらい!」というのが友人の主張です。

なるほど、良い事例です。

誤解されそうな場合は配慮を

使われている敬語は、たしかに間違ってはいません。

「持つ」という動詞を”持つ行為をする人を立てる敬語”にするなら「お持ちになる」です。

 

しかし、憤る友人にも理はあります。

たとえば「記入済みの申込書をお持ちください」と言われたら、「持ってきて渡す」ところまでを指します。

別の例として、”持つ行為をする人を立てず、受け手を立てる敬語”で言えば、「コーヒーをお持ちします」と言うとき、頂戴って言われるまでコーヒーを手に持ち続けているんだろうなぁと解釈する人はいません。こちらも「持ってきて渡す」ところまでを指します。

 

そう考えると、友人は敬語が分からないから掲示の意味を取り違えたのではなく、敬語が分かるからこそ、その指示に素直に従おうとしたのです。

にもかかわらず拒否され不要と言われたのですから、憤る気持ちも分かります。

 

一回経験すれば分かるとも言えますが、一回分かればもうこんな掲示は要りません。初めての人にこそ必要な掲示に解釈が分かれる書き方をされては、せっかく敬語を使ったのに配慮になりません。

 

では、どのように書けばよかったのでしょうか。

正しい書き方は一つとは限りませんが、私なりに、例を挙げてみます。

 


 お客さまへ

 

食券をお持ちのままお席でしばらくお待ちください。


それでは、また。