「使用する」~敬語クイズの答えと説明

先週は、試みにクイズ形式にして出題しました。

出題に使用したのは、以下の画像です。

この画像には、3ヶ所に敬語が使われています。

※漢字の使用・不使用は、今回正誤判断の対象外とします

 

① (対策と)致しまして

② (エアータオルを)使用できません

③ (ペーパータオルを)ご使用してください

 

このそれぞれについて、回答をお寄せいただきましたので、順に説明したいと思います。

 

①「対策と致しまして」は正しいか

「対策と致しまして」と「対策としまして」ではどちらが正しいでしょうか。

 

「致す」「ます」は共に、読み手(聞き手)を立てる敬語です。または、書き手(話し手)がへりくだる言葉とも言い換えられます。

 

したがって「対策と致しまして」と「対策としまして」を比べたときに読み手に対する敬意が、前者のほうが高く、後者のほうが低くなります。ただ、方向性としてはどちらの文章も読み手を立てています。その点で違いはありません。

ただし、どのくらい立てるのが適切かの判断は、書き手と読み手の双方に委ねられます。それが一致すれば気持ちよく、一致しないと心がざらつくかもしれません。

②「使用できません」は正しいか

次に、「使用できません」を見てみましょう。この文章で使われている敬語は「ます」だけなので、読み手だけを立てています。それに対し、先週、私は以下の説明文が正しいかどうかを問いました。

 

A「使用できません」は客に対して失礼なので、「ご使用できません」とすべきである

 

多くの方が勘違いされるのですが、「ご●●できません」は「●●できません」に「ご」を付けたものではありません。「ご●●できる」「ご●●できない」というように、「ご」と「できる(できない)」がセットで敬語として成立します。

 

そして、「ご●●できる」とは、「●●」するひとを立てない敬語です。

例えば「すぐご提供できます」と言えば、提供する人を立てず、受け取る人を立てる意味です。

 

よって「使用できません」のままでよいのです。

もし、読み手ではなく、使用者を立てる敬語を使いたい場合には、「ご使用になれません」とします。

③「ご使用してください」は正しいか

最後に「ご使用してください」を見てみましょう。「ください」は、何かをしてくれる人を立てる敬語であり、ここは問題ないでしょう。

もう一つ「ご使用して」に敬語が使われていますか、これも②と同様「使用して」に「ご」が付いているわけではありません。「ご●●する」という敬語があり、それが活用して「ご●●して」に変化しています。

 

この一文に対し、先週、私は以下の説明文が正しいかどうかを問いました。

 

B「ご使用してください」は客に対して失礼なので、「使用してください」とすべきである

 

実は、この「ご●●する」も、②と同様「●●」するひとを立てない敬語です。

 

つまり、「ご使用してください」と言うなら、客(=使用する人)に対して使用する人を立てない敬語を用いることになるので、これは失礼です。「使用してください」であれば、少なくとも「ください」という正しい敬語だけが使われていて、方向性も間違っていません。よって、Bの説明文は正しいということになります。

 

ただ、人によってはこれでは敬度(=敬意の度合い)が足りないと感じるかもしれません。そのような場合、「ご使用ください」とすることで、もう一段、敬度が上がります。

敬語を自分事として見る

単にブログを読むのと、実際に自分で考えてみてから答え合わせをするのでは、印象が違うのではないでしょうか。

 

「え、そうなの?知らなかった!」

「いやぁ、納得いかないなぁ……」

 

そんなふうに、何かしら心が反応してくれたらいいなぁと思います。

もっともっと敬語に興味を持っていただけるよう、また新たなクイズも考えて参りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

それではまた。