今回は、ちょっと軽い話題を選んでみました。「おなら」です。
読者の方から「お並びください」と連呼されると「おなら、おなら」と聞こえてしまって笑ってしまうという話を伺い、ならばいっそのこと「おなら」についてきちんと理解してもらえればというのが趣旨です。
食事時や爽やかな朝に目にされた方には申し訳ございません。
他者を立てない敬語【美化語】
敬語とは、誰かを立てる目的で使うものですが、独り言で「明日、お弁当持ってかなきゃ」というときの「お弁当」は誰も立てていません。このように他者を立てる目的を持たないのに「お」が付く言葉が多くあります。これらは、敬語と区別して美化語と呼ばれます。中には、「おにぎり」のように「お」を外すと「にぎり=寿司」の意味になってしまうものもあれば、「ごはん」のように「ご」を外して「はん」だけでは意味をなさなくなってしまうものもあります。
「おなら」の場合
では「おなら」の「お」を外すとどうなるでしょうか。
そう、「なら」ですね。これも、「ごはん」と同じで「お」を外すと意味をなさなくなってしまう一つです。
では、「なら」とはなんでしょうか。漢字で書けば「鳴ら」です。
偉い人が、楽器を奏でるなら「お鳴らし」とも言えますが、失礼なことを敬語にすると嫌味になり、失礼さに輪をかけます。
また、この言葉の成り立ちは室町時代だそうで、言葉の最初に「お」を付けて最後を省くという女房言葉のようです。言ってみれば当時の流行りですから、今で言えば「あけましておめでとうございます」を「あけおめ!」と言う、みたいなものでしょうか。
それにしても室町時代と言えば、犬の鳴き声を「わんわん」ではなく「びよびよ」と表していた時代です。それだけの時をへて「おなら」が室町時代から変わらずに使われているとは、すごいですね。
それでは、また。