先週は「おられるけ」という富山弁をテーマに記事を書きました。
「おられるけ」の元の動詞は何かといえば、それは「おる」です。この「おる」は平成19年に公布された『敬語の指針』にて、「謙譲語Ⅱ(丁重語)」と分類されています。
謙譲語Ⅱ(丁重語)について
以下は『敬語の指針』18ページからの抜粋です。
「謙譲語”Ⅱ”」と言われても何が「Ⅱ」なのかよく分かりませんが、カッコ書きで添えられた「(丁重語)」という名称もよく分かりません。丁寧語という言葉は聞いたことがありますが、丁重語はまた違うのでしょうか。
その丁寧語とはどのようなものか、こちらも敬語の指針(20ページより抜粋)を見てみましょう。
「話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの」が丁寧語。
「話や文章の相手に対して丁重に述べるもの」が丁重語。
丁寧だから丁寧語。丁重だから丁重語。たしかに区別はできていますが、それでは「丁寧」と「丁重」の違いが分かるでしょうか。
一般的に、物は丁寧に扱い、人は丁重にもてなします。
それでは、言葉の対象が物事か人かで分かれるのでしょうか。
いえいえ、丁重語の例にある「拙著」は「物」ですし、丁寧語の「ます」は人であれ動詞に連なる言葉です。もちろん、丁寧語だから「自分側の行為・ものごとなどを」述べられないなどということは一切ありません。
おそらくはみんなで頭をひねって考えた名称
『敬語の指針』は、大学教授や放送界などから、錚々たるメンバーを集めて考えられたものです。つまり、立場の異なる人々が一生懸命妥協点を模索した、そういうネーミングなのだと思います。
今まで「謙譲語」と一括りにしていたものに無理があるということを認めたのですから、まずそれは勇断だったと言えます。
しかし、今まで謙譲語として教えてきたものを謙譲語ではありませんでしたとも言えません。そこで「謙譲語Ⅱ」としてみたものの何が「Ⅱ」なのか。その説明を書いてみたら「丁寧語」と同じにならざるを得ません。だからといって「丁寧語」と「謙譲語」が同じものでした、なんてことになってしまうのは大変に困ります。そこで謙譲語「Ⅱ」・「カッコ」丁重語。
謙譲語という名前だけれども謙譲語Ⅰとは違う。丁寧語と同じ説明になってしまうけれども丁寧語とも違う。このようにネーミングを変えれば、今までの敬語教育の在り方を否定せずに、より発展させたものとして違うものだと言えるのではないか。
あくまで私の勝手な想像に過ぎませんが、こんな考えだったのではないかと想像してしまうのです。
名称が決まった実際の経緯は分かりませんが、これらの名称にはなんとも「苦肉の策」がにじみ出ています。
そこで次週は、『敬語の指針』に掲載されている分類表を参考に、私なりに分類表を作成して披露したいと思います。ご期待ください。
それでは、また。