先週は、「お/ご」の付く敬語から、誰を立てているのかを見分けるクイズを出しました。
念のため、問題を再掲します。
【問題(再掲)】
この文章の中に、接頭辞「お」や「ご」の付いている言葉が3つあります。
①ご使用すれば
②ご利用
③ご返却して
この3つそれぞれについて、主体を立てる敬語か、受け手を立てる敬語かを見分けなさい。
答えは、各問ごとに、アかイで答えなさい。
以下、回答の選択肢を簡単にまとめると、立てる対象が主体(=動詞が表す動作をする人)であればア、受け手(=その動作をしてもらう人)であればイということです。(詳細は前回をご覧くださいませ)
【答えと解説】
【答え】
①イ
②ア
③イ
このクイズの解き方だけに焦点を絞ると、動詞に「する」が付いていたら、受け手を立てる敬語で確定します。
その観点で問題を見直すと、下記の太字にしたところが「する」の活用です。
①ご使用すれば
②ご利用
③ご返却して
人間は、多少の誤字脱字があっても文脈に沿って補正して読むようにできています。ポスターを見ると文脈に引きずられてしまいがちですがポスターが無いと、逆に分かりやすいんじゃないでしょうか。
このポスターを書いた店主は、ほぼ間違いなく、主体であるお客さまを立てるつもりで敬語を使っていることでしょう。しかし、使われている敬語を見てみると、①と③には「する」が含まれていて、②にはないので、①と③が受け手を立てる敬語であり、②が主体を立てる敬語ということになります。
では、もし万一①と③が使われている敬語そのままの意味だとするとどうなるでしょうか。
敬語そのままの意訳
①の意訳
①の全文は以下の通り。
「当店に備え付けのボディソープとリンスインシャンプーをご使用すれば、手ぶらで入浴できます。」
※主体を立てず受け手を立てるということは、使用するほうを立てず使用させる側を立てるということ
↓
「当店に備え付けのボディソープとリンスインシャンプーを使わせてあげましょう。そのおかげで手ぶらで入浴できるのですよ。」
③の意訳
③の全文は以下の通り。
「使い終わりましたら、フロントまでご返却してください。」
※主体を立てず受け手を立てるということは、返却するほうを立てず、返却される側を立てるということ
↓
「使い終わりましたら、あなたが借りたのですから責任を持って返却してください。」
このように言われてしまっては身も蓋もありません。
あえてそのようなことは言わず、客を立てる。そしてお知らせを読んだ客は、かえって遜って店に敬意を払い、借りたものは丁重に扱って責任を持って返却する。
これが相互尊重です。
それでは、また。