敬語クイズ#3「お」「ご」の付く敬語から、方向性を見分ける~復習

今回は、先々週に出題した敬語クイズの復習です。

読者の方より、「今回の訂正例文と共に、ちょっと復習編を書いていただければ」とリクエストを頂戴しましたので、喜んでお応えします

もしこの記事からご覧になった方は、よろしければ出題からどうぞ。


問題の「お知らせ」を再掲します。

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間違いを単純に修正した例

この「お知らせ」には敬語の間違いが2ヶ所あります。その部分だけをとりあえず正しい敬語に直すと以下のようになります。※太字部分が修正箇所


当店に備え付けのボディソープとリンスインシャンプーをご使用になれば、手ぶらで入浴できます。

フロントで、100円で貸出しますので、ご利用下さい。

尚、使い終わりましたら、フロントまでご返却下さい


「ご使用になれば」は主体(=使用するその人)を立てる敬語の仮定表現です。敬語を使わなければ「使用すれば」です。仮定表現は使う機会が少ないので、その分、見聞きすることも少なく、パッと出てこない人が多いでしょう。正しい敬語が出てこなければ、「ん~、これでいいのかな?」となってしまいます。

 

一方、最後の「ご返却して下さい」が気にならなかった場合、もしかすると「ご利用下さい」より「ご返却して下さい」のほうが文字数が多く丁寧な言い方のように感じている可能性もあるので、注意が必要です。もし「ご返却下さい」が、文字数が少ないために敬意が不足しているように感じるなら、「ご返却になってください」を使ってください、もちろん「ご利用になってください」とも言えます。

どちらも、正しい敬語の形を覚えてくださいね。

修正に加え、多少校正した例

ただ、私ならもう少し違う文章にするかなと思うので、そちらも書いておきます。

なお、言葉選びに間違いはあっても正解はありません。人によって違うのが当然なので、下記以外にもいろいろな表現ができます。※太字部分が修正箇所


当店に備え付けのボディソープとリンスインシャンプーを使用すれば、手ぶらでご入浴になれます

フロントで、100円で貸出しますので、どうぞご利用ください

尚、使い終わりましたら、フロントまでご返却願います


<1文目>

もともとは、「使用する」に敬語が使われていて、「入浴する」は敬語が使われていませんでした。敬語を使うなら、後の言葉を敬語にしたほうが敬意が伝わりやすいので、敬語にする言葉を入れ替えました。ちなみに「ご〇〇になれる」は主体(=〇〇するその人)を立てる可能表現です。

 

<2文目>

敬語は距離を取る言葉です。気持ちが伝わるような距離を詰める言葉を入れたいと思い、「どうぞ」を足しました。またここで使われている「ください」は補語なので、平仮名にしました。

※補語とは、動詞が持つ本来の意味から変化して、ニュアンスを補足する言葉として使われる言葉のこと。この場合「ください」を付けないと「利用しなさい」になる。ここでは、物の所有権が移る「下さい」という本来の意味ではなく、「(あなたがそれをやるのは)ありがたいことである」というほどのニュアンスを補足しています。

 

<3文目>

「ご返却ください」が間違っているわけではないのですが、同じ言葉が続くと人間はイライラします。そこで別の言い回しにするため「ご返却願います」に置き換えました。

日本語は曖昧な言語などと言われますが、こと敬語に限っては、明確なルールがあります。だからこそ、分かってしまえば簡単に使いこなせます。

 

さて、今回の敬語クイズはいかがでしたか?

ご感想、ご意見、ご質問、諸々お待ちしております。


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