敬語には機能があります。それは敬意を払う方向性を示すことです。
そしてその方向性は以下の3つです。
① 聞き手(読み手)
② 主体
③ 受け手
そしてそれぞれに、払う敬意の中身があります。
先週お伝えした「主体尊重」は、他者をありのまま受け入れる姿勢を示すものです。主体尊重を示す敬語には「お待ちになる」や「待たれる」「なさる」「貴社」などがあります。それは、対象をあってあるものとして受け入れ、自らが手を加えようとすることなど許されず、良いの悪いのと評価する立場にすらないと表明することです。
言ってみれば、他人は変えられないというだけのことですが、これが頭では分かっていても行動では逆のことをしてしまって人間関係がうまくいかないということがままあります。それを、まずは言葉遣いから改めることで意識したいものです。
それでは今回は、敬語が示す敬意を払う方向性の三つ目、「受け手」についてです。
受け手を尊重するとは、逆の言い方をすれば主体(=〇〇するその人)側の責任を意識することです。
営業する側と営業される側の関係を例にとって考えてみましょう。
問題
問題ー1 営業マンが主体=検討する側が受け手
明日は、初めて会うお客さまに自社商品をプレゼンします。営業マンの態度として、自身の責任を意識し、受け手を尊重している程度が高いのはどちらでしょう。
A:客が来てほしいって言うならとりあえず行ってみるか。パンフレットだけ持って行って商品の説明だけすればいいよな。
B:お客さまの会社情報からして、当社を選んだ理由はなんだろうか。明日聞かれるとしたらどんなことだろうか。質問されそうなことはなるべく準備して、少しでもお客さまに信頼されるように頑張ろう。
問題ー2 検討する側が主体=営業マンが受け手
明日は依頼した営業マンがやってきます。検討する側の態度として、自身の責任を意識し、受け手を尊重している程度が高いのはどちらでしょう。
A:まずは説明を聞いて今日のところは帰ってもらおう。向こうは契約取るつもりで来るかもしれないが、俺は上司からとりあえず聞いといてって言われただけだし、こっちが客なんだからそれでとやかく言われる筋合いはないよな。
B:内情を何でも話すわけにはいかないが、なぜ検討していて、どういう効果を期待しているのかを分かってもらい、当社に合った商品を教えてもらおう。この後、何社か同業他社には来てもらうから、購入決定までには少し時間がかかることも伝えておかなければいけないな。
受け手尊重とは
例えば人に「お金を渡す」と言うと「お金をあげる」というニュアンスを含みかねず、ともすれば渡すほうが目上、もらうほうが目下という関係になりがちです。それを事実はそのままに敬意だけ入れ替えて表現するのが受け手尊重です。
つまり、「お渡しする」と言えば、渡すほうが目下、もらうほうが目上という人間関係が明確になります。このように、他者との関係が生じる動作において、主体(=〇〇するその人)を立てず、受け手を立てるので、受け手尊重です。
答え
2問とも、答えはBです。
営業マンは検討する側を尊重し、検討する側は営業マンを尊重する。これが相互尊重です。
相手を軽んじる態度は、その場だけ見れば楽だったり気分が良かったりするかもしれませんが、それでは良好な関係を維持できません。
長い目で見れば相互尊重こそが自分の利益につながることは、冷静に考えれば誰の目にも明らかなのですが、実際にその場面になるとなかなか難しいものです。
最近は「情けは人の為ならず」という言葉を、「人に優しくするのはその人のためにならない」という意味に解釈する人が増えていると聞きます。
本来の意味は敬語の意味を知れば明らかです。
それでは、また。