9月22日の敬語クイズにおいて、ドタキャンされた相手に対して「気にしないように伝え、連絡をくれたことにお礼を言う」という対応が主体尊重の考え方に沿ったものだとお伝えしたところ、「どうでもいい友人ならばそう伝えるが、親友ならそんなことは言わない」、「嫌われたくないので、実践している」などといくつか反響を頂戴しました。
敬語はあくまでも相手と距離を取ってコミュニケーションするための道具の一つにすぎません。クイズも、主体尊重の考え方として合っているのはどれかというだけであって、正しい生き方を規定するものでもなければそれを強制するものでもありません。せっかく古来からある日本人が培ってきた考え方を知り、それを自身の選択肢の一つとして持ってもらえるようになってほしいというのがこのクイズの狙いです。
そこで今回は、この主体尊重をどんな場面で使うべきなのか、いくつかの状況を提示したいと思います。
① 目上に対して使う
一つ目は、当然のことながら、目上に対して使います。
例えば、上司に言われて準備していたが直前になってその指示が取り消しになったとしましょう。そのときに通常であれば、部下が上司に向かって文句を言うことはありません。お客さまから、直前に予約のキャンセルを受けたときも同様です。
相手の自由意志を尊重し、それを変えようとすることも批判することもしません。
しかし、主体を尊重するのは、その主体となる人物が目上とばかりは限りません。
② 損ないたくない関係で使う
次に、上下にかかわらず、関係性を維持したい場合にも使います。例えば、職場のメンバーで飲み会を設定したにもかかわらず、一番目下であるはずの新人がドタキャンをしたとしましょう。
その場合、もしかしたら普段は厳しい上司も「気にしないように伝え、連絡をくれたことにお礼を言う」かもしれません。それは、今後の職場での人間関係にひびが入らないことを優先する判断をした場合です。
③ 敬遠したい対象に使う
次に、いさかいも起こしたくないし、なるべく関わりたくない対象にも使います。
例えば、本当なら自分のほうこそこの約束をキャンセルしたかったような相手がドタキャンをしてくれたら、内心ホッとするかもしれません。
そんなとき、「来てくれなくてよかった」と言う代わりに主体尊重を使います。
①②と③における使い方の違い
説明の便宜上3つに分けましたが、大きくまとめれば全て人間関係に距離を取っています。その中でも①②は両方とも積極的に維持したい関係です。親しき中にも礼儀ありというように、本当はもっと近づきたいのだけれど、この関係性を壊さないように礼節を保っているのです。
したがって、表面上はドタキャンに対する同じ対応ですが、①②はキャンセルしたその主体がもし理由を話したいなら、もしくはこちら側にキャンセルの原因があるならその批判を、いつでも聞く姿勢を持っています。
いずれにせよ、主体尊重はゴマすりとは関係ありません。
主体尊重の使いどころについて、参考になったでしょうか。
それでは、また。